スラムダンク名言集3「ほぼ全キャラ−山王・豊玉・その他編−」

漫画
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いよいよ最後の章となりました、スラムダンク名言シリーズ。

今回は、物語の終盤、インターハイ編からの紹介です。

その他、インパクトの強かったチョイ役についても書いておりますので、ぜひご覧ください。

山王工業高校

深津 一成(ふかつ かずなり)

最強山王のキャプテンにして、冷静沈着のPG、深津です。

深津は外からも打てる得点力、攻めるようなディフェンス、リーダーシップ、冷静さ、全てを備えたPGです。

2年生の時に牧とマッチアップしていますが、牧のドリブルにも抜かれませんでした。

湘北戦では宮城とマッチアップし、湘北を大いに苦しめます。

試合開始直後、湘北は宮城と桜木により奇襲を仕掛けます。
宮城から桜木のパスで奇跡のアリウープが決まり、「もしかして湘北は強いのか?」と、会場にいる全員を動揺させることに成功した…かのように見えました。

アリウープが決まった直後、深津は簡単に得点を決め、以下のように言いました。

同じ2点だピョン

224話

簡単に得点を決める技術面はもちろんのこと、決して動じずに物事の本質を見るような、その冷静さからは強敵感が溢れ出ていました。

湘北が勢いづく度に、深津は上手に流れを断ち切ります。相手がいけそうだと思っている時こそ、仕事をするのが深津です。

普段はピョンを語尾につけ、以前はビシを語尾につけ、かなりの不思議キャラです。しかし、コートに入れば頼れるキャプテンそのもので、山王のゲームメイクを一重に担っていました。

作中での存在感と裏腹に、あまりどんなキャリアを歩んできたか解説が少なく、掴みづらいキャラクターです。

山王が押されている場面、堂本がタイムアウトを取らず深津にゲームメイクを託したことからも、誰からも頼りにされているリーダーなのでしょう。

プレーヤーとしても人間としても弱点がないように思いますが、スピードがある宮城のようなタイプは苦手としているようでした。

宮城はプレーヤーとしてバランスの悪いタイプ、良く言えばスペシャリストタイプで、スピードとクイックネスが一番の武器です。

安西監督の言う通り、湘北にとってこの試合は局地戦でした。
宮城と深津は、能力の総合値は深津が格上でしょう。

しかし、スピードだけは宮城が上回っており、スピードで勝り数少ないチャンスを逃さなかった湘北が、奇跡の逆転を演じるのでした。

河田 雅史(かわた まさし)

間違いなく作中最強のセンター、河田です。
今までの湘北はどんな試合でも、赤木が負けることはありませんでした。

湘北の土台である赤木が踏ん張り、宮城が引っ掻き回し流川・三井が点を取る、これが湘北の形です。

しかし、赤木が作中でボロボロにされた唯一の相手が河田です。

高校入学後、急激な身長の伸びによりポイントガード→フォワード→センターとポジションを変えてきました。

まさに「大きくてウマイ」センターである河田は、肉体の強さも鋼のようです。

全力で勝負してくる相手を求めており、諦めずに勝とうと向かってくる湘北との試合を楽しんでいるようでした。

河田弟をファールではあるが押し倒せるパワーの桜木と、河田が空中でぶつかりあった時、なんと桜木は吹き飛ばされました。

唖然とする桜木に対して、河田は以下のように吐き捨てます。

あれっ?いたのか

251話

ミルドラースのような顔で、不敵に笑いながらの一言です。

253話、沢北に「パスくださいよ深津さん!」 と言われたときは、かわいい息子を見る母親のような顔なのに、なんて表現力豊かなセンターなのでしょうか。

赤木は何をやってもゴリラのような顔しかできないのに対し、一人で何面も表情を使い分けます。

さらに赤木がゴール下からしか得点ができず、プレーの幅も狭いのに対し、PGやFWの経験を活かしどこからでも攻めることができます。

弟思いでフォローも怠らず、沢北とは微笑ましくプロレスをしています。

桜木が負傷した時はいち早く気づき、「無理はするな」と敵ながら父親目線でアドバイスまでしてくれました。

これと言って弱点の見当たらない、最強のセンターでした。

1on1で赤木は河田に勝てませんでしたが、試合終盤から、徐々に赤木が河田と渡り合い始めます。

初めて自分より格上の選手と出会ったことで、実践の中で赤木が上達していく様子が伺えました。

赤木と河田は同級生です。大学バスケでは、赤木と河田で切磋琢磨していくのではないでしょうか。

沢北 栄治(さわきた えいじ)

作中最強の1on1を誇る、沢北です。

あの流川を圧倒し、どうやら仙道よりも上のプレーヤーのようです。

山王のエースで、あまりの力の差に湘北を絶望させました。パスを覚えた流川がパスと1on1を織り混ぜなんとか盛り返しましたが、流川が得意としている1on1では最後まで勝てませんでした。

日本一になりたいと言う流川に対して、沢北は「俺がいない日本でなればいいさ」と言った後、このように続けました。

夏が終わったらオレはアメリカだ

254話

沢北は2年生ながら誰からも一目置かれる、センス抜群のプレーヤーです。

その能力はただ才能だけで成り立っているのではなくて、毎日の父親との1on1など努力と挑戦の連続で築かれました。

チャレンジこそが沢北の人生であり、今の自分では到底越えられそうもない高い壁に出会う度に、思わず笑いが溢れてしまうほどの挑戦者です。

運動能力の高さ、オフェンス力、ディフェンス力、相手の弱点をあっさりと見抜く戦術眼、どこを切り取っても最高峰の選手でした。

流川のオフェンスを受けながら、フェイクの時のボールが無防備であると、流川の欠点も指摘しました。

一方で、唯一の弱点としては集中力の低さがありました。あまりにも沢北の能力がずば抜けていたため、試合中に退屈してしまい、集中力を失う癖があります。

湘北戦は山王にとって初戦であったこともあり、前半は中々集中力を保てず、ベンチに退いてしまいます。
しかし、後半から集中し始めた沢北は誰も手がつけられず、流川も最後まで沢北を止められませんでした。後半途中からは桜木の意味不明な動きが気になってしまい、再び集中を欠き流川に付け入る隙を与えました。

バスケはチームスポーツですが、沢北は1on1にこだわり、時としてチームの和を乱すようなプレーに見えてしまいます。

流川がパスをし始めたのに対し、沢北は決してパスを出しません。エースとして信頼されている沢北は、誰からも咎められることなく1on1をやり続け、点を取りまくります。「1on1しかしてこない」と分かっているのに、その1on1で勝ち続け、誰も止められないのです。

挑戦を楽しむ沢北は、あえて1on1にこだわることで、自分を追い込んでいるのかもしれません。

名実ともに日本一のプレーヤーですが現状に満足せず、アメリカ行きを流川に告げる沢北は、類いまれな向上心を感じさせました。

1on1では勝てないがパスを出す流川、1on1では勝てるがパスを出さない沢北。両エースの戦いは、個人で見れば沢北の勝利でしょう。

しかし、チームとしては、流川率いる湘北が勝つのでした。

野辺 将広(のべ まさひろ)

リバウンドの強さを買われている、スタメンの野辺です。

通称ポールです。

素人ながらその身体能力でリバウンドを取りまくる桜木ですが、後半途中まで野辺相手にリバウンドを取れませんでした。

それでも湘北のためにリバウンドをとる必要がある桜木は、安西監督・部員達の期待を胸に、野辺のユニフォームを引っ張りリバウンドを取らせません。

2回目もユニフォームを引っ張りリバウンドを妨害しようとしますが、その時に野辺がこう言いました。

二度同じ手を食うかァ!!

244話

しかし桜木のユニフォーム引っ張りはフェイクで、野辺が気を取られている間にあっさりと桜木にポジションを入れ替わられてしまいます。

桜木のプレーは徐々に勢いを増していき、野辺にスクリーンアウトで勝てなくても、脅威的なジャンプ力でリバウンドをとり続けます。

桜木の常人離れした身体能力に手を焼いた野辺は、河田に桜木のマークを任せベンチに退きます。

試合序盤で、流川のダンクをブロックしようとした際に手を怪我したようだったので、再びコートに現れることはありませんでした。

野辺の怪我により、明らかに経験不足の河田弟を試合に出し続けることになってしまったのが、湘北にとっては幸運でした。

最後まで野辺が試合に出ていたら、湘北はリバウンドを取れず、大量得点で負けていたことも考えられます。

スクリーンアウトで凄まじいパワーを見せるも、試合序盤の負傷、桜木のファールにより集中力を欠くなど、本領発揮とはいきませんでした。

松本 稔(まつもと みのる)

沢北がいなければどこでもエースを張れる影の薄い男、松本です。

実力は本物で、ディフェンスが上手な三井を何度も抜き去り、赤木相手にゴール下に突っ込みます。

しかし、消耗しきっているのに3pを何度も決める三井に対して、終始動揺しています。

試合終盤、流川が三井にパスをした時、こう言いました。

奴はうてねえ!!

261話

ご存知の通り、三井のシュートは今までのどのシュートよりも美しい弧を描き、3pが決まりました。

三井は「腕が上がらないくらい限界だ」と松本に聞こえるように言ってありましたので、松本は油断したのかもしれません。

諦めない男:三井は、「腕が上がらない」など大ウソでした。この後も、三井に松本がファールをするも3pが決まり、フリースローと合わせて4点を決められてしまいます。

フラフラで意味不明な言動を繰り返す不気味な三井に、松本は最後まで対応できませんでした。

オフェンス面でも沢北の1on1の影に隠れ、目立った活躍はありません。

もし、山王が沢北の1on1にこだわるのではなく松本も活かすようなバスケをすれば、三井はディフェンスできる体力は残っていなかったので、湘北はかなり苦しかったのではないでしょうか。かなりの才能の持ち主であるはずですが、個が強い山王では影が薄いままでした。

松本ほどの能力がある選手が目立たないことが、山王というチームの強さでもあり弱さでもあるのかもしれません。

松本は山王の準エース、三井も流川に次ぐエースです。両チームの準エース同士によるNO2争いは、チームに活かされた三井に軍配が上がるのでした。

一之倉 聡(いちのくら さとし)

スッポンディフェンスの一之倉です。

全国でも有名なディフェンスのスペシャリストですが、元中学MVPシューターの三井はこの試合絶好調でした。

一之倉のディフェンスを振り切り、切り込んでのパスや得意の3pシュートで点を取りまくります。

試合中、一之倉が自分語りを始めます。

試験中に猛烈に腹が痛くなった時…

気を失うまで我慢し通したこともある

急性盲腸炎だった 

226話

一之倉の人柄を表す、明言だと思います。

我慢の男:一之倉は、前半三井に食らいつき続け、後半には三井は山王の作戦通り体力が無くなってしまいました。

山王の作戦勝ちであり、三井は途中交代…と思われましたが、三井は退がりません。

体力の限界を超えていても、3pを打ちまくり決め続け、前半の一之倉の奮闘虚しく湘北が勝利するのでした。

急性盲腸炎を我慢できる一之倉の忍耐力よりも、三井の忍耐力が上回っていたようです。

河田 美紀男(かわた みきお)

河田弟の美紀男です。

「ゴール下まで相手を押し込んで、振り返ってシュート」

武器はこれだけです。

桜木に「のんきな顔しやがって」と言われた後、美紀男はこう言いました。

あっああ…よく言われます美紀男はのんき…

229話

河田兄とは異なり柔らかい顔立ちで、誰からも好かれそうです。

身長210cm、体重130kgの逸材ですが、如何せん真剣勝負の舞台に上がるには経験不足でした。

のんきな美紀男は湘北にとって唯一の穴で、序盤は桜木VS美紀男で桜木が点を取り、後半は赤木VS美紀男で赤木が得点を重ねます。

美紀男がやられる度に河田兄が物凄い速さでヘルプに飛んできますが、美紀男は湘北に付け入る隙を与えてしまいます。

堂本 五郎(どうもと ごろう)

山王の監督、堂本です。

神奈川県の監督はおっさんばかりでしたが、流石天下の山王、髭メンでカッコイイ男です。

山王の監督を率いているだけあり、対戦相手の分析力、ゾーンプレスなど戦術を練る力、現場での采配力、全てがピカイチだったと思います。

まさかの山王敗退に終わった直後、選手にこう言います。

「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる

276話

最強山王は、ここ数年負けたことがありませんでした。

そんな山王に対して、負けが財産だと言い放ちます。

勝ちを重ねると、自分達の改善点が見えなくなったり、勝利の嬉しさを忘れてしまうものです。
勝ちすぎてしまったことで、プレッシャーもどんどん大きくなるでしょう。

湘北に負けたことで、一度初心に帰り、自分達の足元を見つめ直す良い契機になるのではないでしょうか。

実際、湘北と山王の試合には、山王の驕りが見受けられました。

例えば、河田弟(美紀男)の投入です。勝利のみを目指すのであれば、美紀男に経験を積ませるなど考えている場合ではないでしょう。

美紀男は狙われ、この采配は山王敗退の明確な理由の一つだと思います。

他にも、1on1に負けたことがない沢北に1on1をやらせ続け、松本は活かさず、個は強い山王でしたが、チームとして最適解を導き出せている訳ではありませんでした。

プロ野球の野村克也元監督は、「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」と言っています。

勝利は幸運によるものかもしれませんが、負けるときには外的要因ではない、必ず負ける理由が自分達の中にあるものです。

勝利からではなく、負けから学ぶことは多いのです。
負けたことがない、最強であることが、山王の最大の弱点でした。

豊玉高校

南 烈(みなみ つよし)

豊玉のエースキラー、南です。

豊玉は選手・応援とガラが悪く、ヤジも汚いという、戦っていて気持ちの良い相手ではありませんでした。

そんな豊玉のエースが、南です。

エースキラーの名の通り流川を故意のファールで顔面に肘打ちし、退場に追いやりました。

しかし、流川は屈せず、片目が見えない状態にも関わらず南の前で懸命にプレーし続けます。

流川のプレーを目の当たりにして、徐々に調子を落とす南は、怪我により一時ベンチに退きます。

南の恩師である北野と話した後、コートに戻った南は、こう呟きます。

ゲームそのものを楽しむことを…もうずっと忘れととった気がする…

214話

豊玉にはチームとして問題が多くあるのですが、ここでは南個人に焦点を当てたいと思います。

南は根っからの悪人ではありません。もちろん流川の顔面に肘打ちをしたことは、許されることではないと思います。

元々エースキラーと呼ばれるようになった出来事は、南の故意によるファールではありませんでした。

南はただ純粋に、誰よりも勝利を望んでいます。藤真率いる翔陽とインターハイで対戦した時に、勝つために威嚇で振り回した肘が、意図せず藤真の顔面に入ってしまいます。

藤真は額を縫うほどの大怪我であり、退場することになりました。翔陽の名言でも解説しましたが、藤真は翔陽のエースであり、藤真に使われることで翔陽はインターハイ常連の強さを誇るチームになります。

そんな藤真が退場した翔陽は失速し、豊玉が勝利しました。この試合から、南がエースキラーと呼ばれ始めるのでした。

相手のエースを退場させることで勝利につながる。藤真を退場させたとき、南は不本意だったでしょう。エースキラーという変なあだ名がついてしまいます。

しかし、南はエースキラーと呼ばれるようになってから、故意にエースを潰すようになってしまいました。

つまり、南はエースキラーとなろうとしたのではなく、エースキラーと呼ばれたから、エースキラーになったのです。

自分に汚名がつくことは本意ではなかったと思います。

故意のファールはスポーツマンシップに反している行為であり、許されません。
ですが、豊玉は北野の戦術が正しかったことを証明するために何としてでも勝たなければいけないというプレッシャーがありました。(後述する岸本編で解説)

一度エースキラーと呼ばれてしまった南は、勝つために、エースキラーになりきるしかなかったのです。

南はどこかで罪悪感を抱えてプレーしていたのでしょう。

流川が南のファールにも屈せず後半から片目でプレーを再開すると、南の様子がおかしくなります。

「湘北を勝利させて、日本一のプレーヤーになる」と、流川は言います。

「自分が輝くことでチームを勝たせたい」とプレーする1年の流川は、「相手の主力を潰すことでチームを勝たせる」と考えていた3年の南にとって、痛いほどに輝かしい選手だったのだと思います。

流川がプレーを再開した後半から、南は絶不調になり全く点が決まりません。

もう一度流川を潰そうと南は空中に飛び上がり、流川の顔面に膝蹴りをしようとします。その直前、北野の顔を思い出した南は自分から膝蹴りをやめて、転倒。この瞬間、エースキラー南ではなくなると同時に、頭からコートに落ちたことで出血し、意識を失います。

目を覚ますと、北野が南を手当てしてくれました。北野が小学生相手にもラン&ガンを教えていること、北野の周りにいる楽しそうにバスケを語る小学生。

それを見たとき、南はふと我に返り、上記の名言が生まれました。

南はエースキラーと呼ばれてから、自分が自分ではないような感覚があったのではないでしょうか。

周りにいる他人からエースキラーと定義づけられ(キャラづけをされ)、周囲からのイメージに合わせるかのようにエースキラーへとなりました。

他人の声によって、エースキラー:南が誕生してしまったのです。

勝利の欲しさ故に、エースキラーを受け入れた南は咎められるべきでしょう。

しかし、エースキラーのような悪を産むのは、僕達第三者の悪意のない声であり、また、ラン&ガンを豊玉から奪ったような大きな権力なのかもしれません。

南は豊玉のエースです。北野との会話を経て、手段を選ばずに勝つのではなくバスケを楽しむという、大事な気持ちを思い出しました。

そのため試合終了直前からは、エースらしく3pを連続で決めます…が、本調子に戻るのが遅すぎました。

エースらしい活躍ができず、豊玉は敗退します。

南もまた、エースキラーに潰された被害者だったのでしょう。

岸本 実理(きしもと みのり)

チョンマゲの岸本です。

性格はオラオラ系で、試合が始まる前から湘北を挑発し続けました。

態度の悪さと裏腹にプレーの質は確かで、大阪得点ランキング2位の実力者です。

南とは小学校時代からの仲です。二人は、豊玉の前監督である北野から、バスケの楽しさを教わりました。

そのため北野を恩人のように慕っており、北野のスタイルであるラン&ガンを大切にしています。

岸本が呪文のようにチームメイトにかける言葉があります。

ラン&ガンで優勝するんじゃ

206話

ラン&ガンとは、オフェンスに力を入れ、ディフェンスはある程度捨てるという超攻撃的戦術です。

前監督の北野はラン&ガンを豊玉に導入し、インターハイではベスト8まで進むのが当たり前の強豪校へと成長しました。

しかし、豊玉はディフェンス力の不足が足を引っ張り、ベスト8の壁を越えられません。

豊玉は私立高校であり、経営が大事です。全国ベスト8になった当初、北野は経営陣から称賛されますが、ベスト8が当たり前になるとそれ以上の結果を求めるようになり、北野をクビにしてしまいました。

新しく来た監督である金平は、北野のラン&ガンを否定しディフェンスを高めようとします。

しかし、チームの主力である南と岸本は北野がクビになったことが許せません。ラン&ガンを貫くことで、北野のバスケが正しいことを大人達に証明しようとします。

結果、監督の戦術を無視し、上記の発言に至りました。

岸本は暴言も多く、ファールも多く、スポーツマンシップには全く則っていない選手です。

ただ、岸本(と南)はチームの勝利以外に、大きなものを引き受けすぎていました。

「目の前のゲームに集中して、全国で勝つ」だけでも大変なのに、「ラン&ガンを貫き、監督は無視して、全国ベスト8を越えて優勝することで、北野監督の正しさを証明する」という高いハードルを自分達に課していました。

プレッシャーに押しつぶされないためにも、チョンマゲでオラオラ系の強い男になるしかなかったのかもしれません。

そもそも北野は解任されるべきだったのでしょうか?

経営者として、結果が出ない監督をクビにするのは当たり前ではあります。プロスポーツの世界でも結果が出ない監督は、どんなに以前までの成績が良くてもクビになります。

しかし、豊玉は高校であり、学校です。私立学校は経営が大事ではありますが、教育の現場では経営では割り切れないような、数字に表れない問題が多々あります。

確かに北野は、数字が出せなくなっていたのかもしれません。一方で、岸本、南を惹きつけるような人間力を備えており、「豊玉に入ってバスケをしたい」と高校生に思わせるような華のあるバスケをしていました。

新しく来た監督である金平は、歳も若く、ディフェンスの指導も出来るという(多分)、履歴書だけを見れば完璧な人選だったと思います。

ですが、ラン&ガンに憧れて豊玉に入学した高校生相手に、この人選は相応しくありませんでした。北野の辞めさせ方も間違いでした。

監督はチームの輪に入れず、チームがバラバラな状態でインターハイに臨むことになってしまいます。

是が非でも勝利が欲しかった豊玉は、イマイチゲームに入りきれず、どこか集中できません。

ラン&ガンで、一回戦で負けてしまうのでした。

敗退直後、岸本の涙は、負けた悔しさによるものではなかったのではないでしょうか。

北野監督の無念を晴らせなかったことへの涙であり、バスケを楽しむことを忘れていた後悔への涙であったのかもしれません。

高校生である岸本が、目の前の練習・試合に集中できるような環境を、経営者は北野をクビする前に作るべきでした。

板倉 大二朗(いたくら だいじろう)

挑発を繰り返すPG、板倉です。

ムカつく顔と態度ですが、大阪得点ランキング三位であり、得点力はあります。

ん?お前スタメンなん?

201話

このように宮城を煽り続け、単純な宮城はイライラで普段通りのプレーができません。

しかし、板倉は高校からPGにコンバートされたプレーヤーです。

得点力はありますが、平面の勝負では小学校からPGをやっている宮城には敵いませんでした。

矢嶋 京平(やじま きょうへい)

豊玉の選手は、流川のことをナガレカワと呼びます。

それは、ロッカールームでの矢嶋のこんな一言から始まりました。

これなんて読むんや?ナガレカワ?

200話

全員が流川を訓読みし続けたのは、コイツから始まりました。

対戦相手の選手の名前すらも知らなかったように、豊玉は対戦相手のスカウトは行っていなかったようです。

折角のインターハイの舞台、チームとして戦えていなかったことが悔やまれます。

金平(かねひら)

豊玉の現監督、金平です。

ここまで述べてきた通り、金平のディフェンスを強化する方針は選手に全く受け入れず、監督らしい振る舞いはできていません。

形だけの監督であり、チームの戦術を決めるのは選手達です。

金平はチームのマネジメントにおいて、人身掌握に失敗しすぎました。生徒の心を掴めていないダメな大人です。

試合前、試合中も豊玉の選手は金平の話を全く聞かず、金平に暴言を吐き続けます。金平はオロオロするばかりで、何も出来ません。

ラン&ガンにこだわらないよう指示を出そうものなら、南に首を絞められ、咳き込んでしまいます。

しかし、金平も我慢の限界でした。

南が不調で全く活躍できず、岸本と南が言い合います。金平が割って入ろうとすると、

「すっこんどれやおっさん」

「お前に言われたないんじゃ 黙っとれ!!」

このように岸本と南に言われ、金平はブチ切れます。試合中のベンチにおいて、周囲の目があるにも関わらず、岸本をグーで殴ります。

そして選手達にこう言い放ちました。

「お前らが憎くてしょうがない」

金平にも契約期間があり、その期間内で結果を出さないとクビになるように言われていました。

焦りもあったでしょう。ですが、インターハイでも結果が出せず、選手からも無視され、ましてや試合中に暴力を振ったとなれば解任は確実です。

金平は一体どこで間違ったのでしょうか。

最大の過ちは、ラン&ガンを否定してしまったことでしょう。

南、岸本と豊玉の主力は、前監督である北野と北野のスタイルであるラン&ガンに憧れて入部していました。

インターハイベスト8の壁を乗り越えられなかったため、北野は解任され金平が着任します。

この時点で、新しい監督からすれば生徒の心を掴むのは難しい状況になっていました。

インターハイベスト8も立派な数字です。バスケ部の事情も知らない、欲深い大人に慕っている監督が突然解任され、「新しい監督に言うことを聞け」と言われても、選手はついていきません。

もし、金平が北野のラン&ガンをより強化する方針を打ち立てていれば、選手は監督についてきたかもしれません。

しかし、金平は北野を「間違っている」とし、ディフェンスを強化する戦術を選手に強いようとします。

この行為は、選手達を魅了したバスケの否定、恩師である北野の否定につながっており、選手は当然反発します。

就任挨拶からラン&ガンを否定するような発言をし、選手の心を掴むのに失敗します。その後も、湘北と戦っている時まで性懲りも無くラン&ガンを否定しており、どんどん選手との距離は開いていきました。

金平も相当なストレスだったはずです。岸本を殴った後、「なぜ俺はあんなことを」と後悔します。

後悔の中で生まれた、金平の名言がこちらです。

相手はオレの半分しか生きていない子供じゃないか…!!

211話

教師をやられている方、年下のマネジメント経験がある方は、金平の言葉に共感するのではないでしょうか。

金平はダメな上司でした。しかし、決して悪人ではありません。

上層部の意向に沿って、北野前監督の成績を越えるために真面目に働いているのであり、豊玉の弱点であるディフェンスを鍛えるという、当たり前の指導方針を掲げました。

金平にもプレッシャーがあったと思います。

ですが、あまりにも選手を見なすぎました。自分の仕事の遂行が一番の目的になってしまい、選手の気持ちを考えての行動はしていなかったのではないでしょうか。

就任挨拶で「豊玉のディフェンスはザル」「31歳だ、若いぞ」と言った辺りから、選手の地雷を踏みまくっているのが分かります(北野は60歳を越えていた)。

岸本を殴った後、金平はこうも言っています。

「オレはお前らが大嫌いだ なのになぜ… 負けちまえっていう気にならないんだ」「それは お前らが心底勝ちたがっていることは知ってるからだ」

南が絶不調でシュートが入らない時は、心配そうな顔で見ていました。

傷を治しコートに入ってきた南がシュートを決め、復活し追い上げの気配を見せると、「うおーいいぞー南!」と泣いて応援します。

金平は、スラムダンクに出てくる監督の中でも一番未熟な監督だったと思います。

しかし、教え子を好きな熱い気持ちもあり、上司からの命令も忠実に遂行しようとする真面目さも持っています。

ただ選手と監督が、少しずつ分かり合えなかっただけなのです。
大人である金平が、半分しか生きていない子供に歩み寄るべきだったのかもしれません。

部下を持った時や、チームで何か物事に取り組む時、金平の過ちからは大いに学びがあります。

名朋工業高校

森重 寛(もりしげ ひろし)

インターハイ前、1年生ながら圧倒的な実力を見せていた森重。

桜木がわざと森重にぶつかりましたが、あまりのパワーに逆に桜木は倒されてしまいました。

桜木をぶっ飛ばした後、森重はこう言います。

あ 悪い!

187話

森重の紹介をしておきながら、結局作中で森重が出場することはありませんでした。

インターハイ前、桜木が名朋工業との対戦がいつになるか確認していたりと、森重、名朋工業は未回収の伏線となってしまいました。

湘北は山王との試合を最後に、インターハイでの最後の試合が描かれることもなく終わってしまい、名朋工業が何位だったのかも分かりません。

物語が途中で終わってしまったかのような印象を受けるかもしれませんが、「意識していた相手と対戦できない」「思わぬ展開で大会の終了」は、現実のスポーツでは当たり前のことです。

スラムダンクの終わらせ方はすごく劇的で、それでいて現実味のあるような、素晴らしい幕引きだったと思います。

森重の実力やその後を考えるのは、僕達読者の役割なのです。

その他のキャラ

店長(てんちょう)

桜木に不当な値段でバッシュを購入された店長です。

桜木と晴子の2回目来店で、思わずこう言いました。

さっ…最強コンビ!!

197話

ギャグ要素の強いキャラクターでしたが、店長の本当の名言はこちらです。

いつも悔しくて目が覚める…僕の青春さ…

197話

店長が高校生でバスケ部だった頃、海南と決勝で戦った17年前の話です。

スラムダンクは高校生の部活が中心の物語です。

部活は高校生だけのものに思えてしまいますが、高校生の青春は、決して学生たちのものだけではないのです。

大人は高校時代を思い出して、いつでもあの頃に戻ることが出来ます。

バスケの試合を見に来ている観客は、高校生同士の試合を通じて、青春を味わい直しているのかもしれません。

桜木と晴子は店長の名言を聞いていませんでしたが、高校生が主役のスラムダンクにおいて、大人も青春時代にいつでも戻れること、戻って良いことを教えてくれました。

鉄男(てつお)

三井の不良仲間、喧嘩最強の鉄男です。

体育館に突然現れて、バスケ部員達を次々に瞬殺していきました。

一人一人倒しながら、こう言いました。

59話

桜木と宮城のやりとりの中から生まれるコミカルな展開から一変、シリアスな雰囲気になります。

鉄男の登場がトラウマになっている読者もいるのではないでしょうか。

「次」と言いながら、流川、宮城、角田、潮崎を瞬殺し、桜木を血だらけにします。

ただ、他の部員は根っからのバスケットマンなのに対し、桜木はバスケ素人であり、桜木の本職は不良でした。

桜木が本領発揮してから鉄男はボコボコにされ、負けてしまいます。

いきなり人をぶん殴り、ノーヘルでバイクを乗る正真正銘の不良ですが、仲間思いの面もあります。

短髪になった三井に、「そっちの方が似合ってるよ おめーには」と声をかけるシーンは、鉄男の魅力が詰まっているのではないでしょうか。

三井は去った鉄男の背中を見ながら、「じゃあな」と言っており、三井が不良仲間と縁を切ること、スラムダンクが不良漫画路線にはならないことを示唆するのでした。

相田 弥生(あいだ やよい)

彦一の姉で、バスケ記者の弥生です。

湘北の試合を含む、バスケの解説に取り組んでくれ、読者の試合展開を理解する助けをしてくれました。

チェック力はあの彦一並みです。

堂本監督の「緒戦の入り方は大事」というコメントに対して、名言が生まれました。

裏を返せばあくまで緒戦に過ぎないともとれたけど…

215話

一見、堂本の発言は完璧主義な監督という印象しかありませんでした。

しかし、後に湘北戦で河田弟を起用するなど、油断が表れる布石にもなっています。

一回戦で負ける気は微塵もなく、あくまでトーナメント全体を見据えて決勝まで戦おうとしており、最初から堂本の考えを見抜いた彦一姉は優秀だと思います。

堂本が高校OBと練習試合させた後、「あいつらに油断や慢心はない」と言うのですが、その堂本自身(指導者)に慢心があったのでした。

中村(なかむら)

弥生と同じく、週刊バスケットボールの記者で新米記者の中村です。

山王戦、弥生に河田について聞かれ、こう言います。

大っきくてウマいんです

239話

弥生からはツッコまれていましたが、秀逸な表現であり、河田の万能さをよく表しています。

安西夫人(あんざいふじん)

安西先生の奥さんです。

流川を着物姿でスポーツカーに乗せて駅まで送る、パワフルな奥さんです。

流川との会話の中で、安西先生についてこう言いました。

最近のこの人はすごく楽しそうでね…

148話

安西先生は、県大会ではあまり素性が明かされません。

しかし、インターハイ編に入るにあたって段々と安西先生の過去や気持ちが明かされていき、物語に深みが出てきます。

上記の名言は、自分からは語らない安西先生の、教え子に対する率直な気持ちが明らかになった貴重な瞬間でした。

北野(きたの)

豊玉高校バスケ部の前監督である、北野です。

安西先生とは仲良しなようで、豊玉との試合後飲みに出かけていました。

安西先生が旧友との会話の中で、敬語ではなく男らしい口調で話していたのが印象的です。

次戦、山王戦に備え、山王の映像を選手に見せようか安西監督は悩んでいました。

すると、北野は山王と湘北を比べてこう言います。

レベルが違い過ぎる

215話

あの魅せるバスケをする監督、北野がこう言うからこそ、湘北がこれから挑もうとしている戦いの難しさが理解できました。

谷沢 龍二(やざわ りゅうじ)

安西先生の大学時代の教え子、谷沢です。

確かな才能がありながら、安西先生の基礎を徹底している練習に我慢できず、アメリカに勝手に行ってしまいました。

しかし渡米後、安西先生の教えの大切さに気づきます。

才能がありながら基礎練習が疎かになっていた谷沢は上達できず、チームメイトとコミュニケーションを欠き、アメリカで自身が思うような成長はできませんでした。

その後練習も行かなくなったようで、消息が途絶えます。

渡米から5年後、安西先生は谷沢の死亡記事を新聞で読みます。

薬物に手を染め、暴走事故を起こして24歳の若さでこの世を去ってしまったのでした。

谷沢が安西先生に送ろうとしていた手紙の中には、名言が詰まっていました。

バスケットの国アメリカの-その空気を吸うだけで僕は高く跳べると思っていたのかなあ…

189話

谷沢は過去編にのみ登場し、登場場面も少ないですが、非常に印象深いキャラクターでした。

上記の名言からは、物事を成功させるために、一瞬で上手くいく魔法などはないことを思い出させてくれます。

大事なのは地味で大変な基礎基本であり、毎日基礎を積み重ねることで、ようやく才能が発揮されるのです。

谷沢は手紙の中で、「お前の為にチームがあるんじゃねえ、チームの為にお前がいるんだ」という、安西先生の言葉の大切さが分かったとも書いていました。

「基礎の大切さ」「チームで戦う強さ」を何度も強調するスラムダンクにおいて、谷沢は反面教師になってくれました。

谷沢を越える才能を持つ、桜木、流川と出会った安西先生は、谷沢の分までこれからも指導するでしょう。

単行本22巻の1コマ漫画では、安西先生が谷沢の墓を訪れた際、彼の墓石から「先生また太ったな…」という呟きが発せられていました。

谷沢もただ上手くなりたいだけだったのに、やることなす事上手くいかず、辛いバスケ人生だったと思います。

天国から安西先生をイジる元気があると分かり、安心させられる一コマでした。

感動の名言が連続:スラムダンクが描く青春

全3部作、長い長い名言紹介が終わりました。

スラムダンクは何度読んでも学びがあり、僕も記事を書きながら新しく発見することが沢山ありました。

物語は、読み込んでこそ味が出ると思います。

みなさんも、ぜひスラムダンクの世界にある青春を、もう一度味わってみてください。

アニメは↓から見れます。

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