スラムダンクはなぜ面白いのか?「人気の理由を徹底考察&解説」

漫画
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圧倒的人気を誇る超・青春スポーツ漫画、スラムダンクの紹介です。

高校生活が始まる新学期、バスケットボール部に入部した桜木が全国制覇を目指すお話で、知らない人はいないであろう大人気漫画であす。

今回はそのスラムダンクについて、何が面白いのか理由を考察してみました。

なるべくネタバレを控えておりますので、スラムダンクを読んだことのない方もぜひこの機会に読んでみてください。

なお、読んだことのない方のために最初に言っておくと、この漫画の主人公は桜木という身長188cm、赤頭のヤンキー男です。「桜木」という名前が出たら主人公だと思ってください。

舞台は神奈川県で、桜木は神奈川県にある普通の公立高校に入学します。桜木が入部早々、インターハイ出場を懸けて県大会に出場するのでした。

あのときの青春をもう一度

全276話、単行本で全31巻のスラムダンクは、実は高校入学の4月から、約3〜4ヶ月のお話です。時間にすると、非常に短い高校生活の一部を描いています。

さらに、部活が物語の中心です。部員と関係ない人、例えば部員の親や恋愛関係になる女性、等はほとんど出てきません。部員の日常生活も描かれません。部活の中でも、練習シーンはあまり多くなく、試合を中心に物語は進みます。

つまり、スラムダンクは「高校生の4月から約3〜4ヶ月の間に行った試合を描く漫画」なのです。

これにより、人間関係のドラマや感情の起伏は、試合中にコートの上で起こることになります。

僕達が部活動で体感する、実際の時間感覚とは逆です。

通常、僕達の部活動の思い出はほとんどが練習や、部員と過ごした何気ない日常だと思います。一方、大きな試合は半年に一回であり、思い出の量としては「練習・日常>>>試合」が普通の感覚だと思います。

この感覚に反しているのがスラムダンクです。

これによりどのような効果があるかと言うと、試合に出場している選手たちに感情移入ができるのです。

もしベタベタと試合外で人間関係が描かれていた場合、良くも悪くも「漫画の中のキャラクター」が試合をしている感覚になっていたと思います。
しかし、前述のように試合外で選手がどんな人たちなのか、この漫画ではあまり描写がありません。

描かれていない空白の部分に、僕達人間が使うのは想像力です。
「この選手は試合中に〇〇と感じている。▲▲な思いをしたことがあるんだろうな」と、読者は想像力を発揮することができます。

そのため、学生時代に部活をしていた読者のみなさんは特に、試合で戦う選手達に対し想像力を巡らせ感情移入ができると思います。
試合の中で味わえる、今しか感じられない一瞬一瞬の高揚感や、対戦相手あっての成長を、読者本人が実際に体感しているような気持ちになれます。

高校生の4月から夏までのあの3ヶ月間、あの儚く過ぎ去た青春を思い出させてくれるのがスラムダンクです。

入口と出口が全く異なる

スラムダンクは、初期の頃ははヤンキーギャグ漫画のような雰囲気がありました。

主人公である桜木は中学時代に地元では有名なヤンキーであり、桜木率いる4人の不良、通称「桜木軍団」は入学早々から上級生の不良に目をつけられます。人を殴る、メンチを切るといったシーンも多く、初期の頃はギャグ:ケンカ=6:4くらいで進む物語なのかな?という印象を受けました。

しかし、ハルコさん(今作のヒロイン)との出会いを通じ、徐々にバスケットが物語の中心へと様子が変わっていきます。

桜木はバスケ部に入部し、素人でありながら試合に出る中で成長し、バスケ部に欠かせない戦力になります。桜木の成長、チームメイトの成長と共に、仲間、対戦相手と描かれる人間ドラマは深みを増していきます。

そして、最終回を迎える頃には、涙腺が崩壊する感動シーンに何度も出会うことになります。この急な感情の変化には心が追いつきません。富士急のグネグネ回るジェットコースターのようです。

「ああ、よくあるギャグ漫画ね。暴力的なとこもありそうだな」なんて思っていたら、最終回で号泣するのです。

入口と出口が全く異なる、良い意味で裏切られる漫画です。

主人公が素人

桜木は素人です。ですが、とても才能のある素人です。

まだバスケを始めて3ヶ月ほどでありながら欠かせない戦力となり、味方も相手も驚かせるプレーを連発します。

初心者ゆえに、もちろんミスも連発しますが、そのミスを自身の貢献で帳消しにします。練習で急激に成長する上に、試合中にもどんどん上達するので、対戦相手が桜木の並外れた成長速度に対応できません。

そのため、どの試合でも異質な素人・桜木が相手の計算を掻き乱す存在となり、バスケ部は県大会、インターハイで快進撃を続けます。

初心者でありながら、その純粋な無知さを逆に活かして、自身の才能で対戦相手の経験や計算を上回る様子は爽快そのものです。

僕達も、「何か自分に新しい才能がないかな」と思ったことが一度はあるのではないでしょうか。

スラムダンクは、「もしヤンキーの桜木に、とてつもないバスケの才能があったら」というお話でもあります。

何か経験のないことでも、挑戦してみれば実は自分に才能があり、奇跡を起こせるかもしれない。そんな夢を与えてくれます。

ただここで大切なのは、桜木が自分の才能を発揮するのに十分な人間性があったことです。

桜木の性格としては、圧倒的な自信を持ち続け(意識的に自分に言い聞かせている)、負けず嫌いであり、決して諦めない根性もあり、自分を天才と呼びながら物凄い努力家で、チームへの責任感もあります。才能はただあるだけでは成功の要因として不十分であり、才能を活かすのはあくまで自分自身の振る舞いです。

素人:桜木からは、才能を活かすために必要な、あるべき姿を学ぶことが出来ます。

基礎基本の大切さ

この漫画のタイトルである「スラムダンク」は、バスケのプレーの名前です。

ボールを投げてゴールに入れるのではなく、ボールを持ってリングに叩きつけるプレー、これがスラムダンクです。通常はダンクと呼ばれます。

ダンクはかなり難易度の高いプレーであり、実際の高校バスケでダンクをする人はまずいません。大きい選手が集まる海外のプロバスケの試合でさえ、一試合で1人につき5本ダンクが決まるのは珍しい方でしょう。それくらい難しいプレーで、バスケットの花形です。

では物語の中身はというと、執拗に出てくる言葉があります。それは「基礎」です。

桜木は、終盤になっても基礎練習をし続けます。バスケには「リバウンドを制するものは試合を制す」という言葉があります。リバウンドとは、ゴールに入らず落ちてくるボールを空中でキャッチするプレーで、作中では何度もリバウンドの大切さが強調されます。

リバウンドは、落ちてくるボールをキャッチするだけであり、シュートやドリブルといったバスケの典型的なイメージとは異なるプレーです。しかし、リバウンドができないとバスケの試合は成立しない程重要であり、まさにバスケの基礎です。この基礎であるリバウンドが得意な選手、それが桜木です。基礎ができるために、チームに重宝されるのです。

このように、どこまでスポーツ選手として成長しても、結局大切なのは基礎基本や地道なトレーニングです。

これはスポーツに限らず、勉強でも仕事でも人間関係でもそうだと思います。挨拶一つまともにできない人が、他者に「心理学を使ったテクニック」等を実践しても、決して人間関係は上手くいかないでしょう。

スラムダンクは、「スラムダンク」というバスケの超上級技、いわゆる応用的な技をタイトルにしておきながら、作中では「基礎」の大切さを強調し続けるちぐはぐさがあります。

しかし、このアンバランスさこそが漫画スラムダンクの狙いであるような気がします。基礎が出来ない人は、「スラムダンク」は到底不可能なのです。基礎基本を毎日、地道に積んだ人だけが、スラムダンクのようなきらびやかな応用技に挑戦できるのです。

漫画のタイトルを見ただけで、いつになっても基礎基本の大切さという初心を思い出させてくれます。

スポーツの良さを凝縮している

学生時代にスポーツをしていた方であれば分かると思いますが、スポーツは勉強や仕事とはまた違う、独特の良さがあると思います。スラムダンクは、バスケ漫画ですが、特段「バスケだから面白い」ということはなく、スポーツの良さを凝縮したような漫画です。

ここから、スラムダンクが伝えようとしている、スポーツの良さを紹介します。

ライバルと切磋琢磨

桜木は、バスケの初心者です。そして桜木のライバルは、幼少期からバスケをやっている流川です。流川はスーパールーキーとして県内では名を馳せており、誰よりも上手いです。

そんな流川を桜木が勝手にライバル視し、流川も桜木を意識するようになり、二人は柊生のライバルのような関係になります。

ここでポイントなのは、桜木と流川はバスケの実力的には天と地ほどの差があることです。これは当たり前なことです。初心者桜木に対して、流川はバスケ歴が長く才能も抜群な選手です。

しかし、スポーツの実力はプレー歴と比例関係にありません。事実、桜木が勝手にライバル視をし、流川のプレーから学ぶことで、桜木の実力は急激に伸びていきます。

物語中盤からは、流川も桜木の圧倒的な才能や実力を口には出さないまでも認めるようになり、桜木と流川はお互いに刺激を与え合いながら成長するのです。

「ライバル」という言葉を聞くと実力が拮抗した者同士を想像してしまいますが(悟空とベジータなど)、その必要はないのだと気づかされます。実力が下の者でも、はるか上の存在を目標、ライバルにすることで必ず近いところまで実力が追いつき、ライバルのおかげで急成長につながります。

他者から学び、高い目標に迫る大切さスラムダンクからは学べます。

チームメイト

上記のライバルとも似ているのですが、スポーツにおけるチームメイトもまた、独特な関係です。

仲良しこよしの友達同士ではないですが、互いに支え合い、信頼し合う関係です。
ここには友情ではない、言語化できない絆のような「何か」があります。

共通の目標のために、コートの上では息を合わせ、共に喜び・悔しがる、そんな存在がチームメイトです。

こうしたスポーツでしか形成できないような人間関係には、独特の眩しさがあります。

大人になってからは、肉体の衰えもありスポーツをする機会が減ってしまいます。
スポーツだから生まれたあの関係性を、懐かしく感じる方も多いのではないでしょうか?

悪がいない

「スポーツは戦いだ」という比喩があります。確かに戦いでもありますが、「争い」という意味の戦いとは少し異なる部分があります。それは、スポーツには正義も悪もいないことです。

対戦相手は全く悪い奴ではありません。県大会に出場するチームは、どのチームも毎日毎日の苦しい練習を重ねてきた選手たちで、それぞれに胸に秘めた思いがあります。試合中はお互いの努力の成果をぶつけ合いますが、ピッチの外では対戦相手は戦友であり、互いにリスペクトし合う関係です。

全力でぶつかってくる相手がいてくれることで成立するのがスポーツであり、そんな相手へのリスペクトを忘れずに、こちらも全力でぶつかり合うのが試合です。

悪がいない、純粋に一生懸命練習している者同士の全力の戦いからは、スポーツの清々しさを体感できます。

徹底した実力主義

上記のようにスポーツには清々しさがある一方、それゆえに残酷なルールもあります。

スポーツの世界は、徹底した実力主義ということです。

「あの選手はそろそろ引退する歳だから、お情けで試合に出そう」ということはありません。スポーツは年齢も性格も関係なく、結果が全てです。

実際スラムダンクでは、初心者、敬語も使えない1年生、高校生でピアスあけている人、2年間不良やってた人、毎回遅刻してくる人等々がスタメンで使われています。3年生なのに試合にスタメンで出れない選手も大勢います。

こうした厳しい実力主義がスポーツの前提であり、その上で選手として認められた者同士で、人間ドラマが巻き起こるのです。
実力は必ず必要なものなのであり、人間性はその次にきます。

コネや情はない世界で、その明快でありながら残酷なルールがスポーツの魅力の一つです。

実践の中で成長

試合は相手ありきで成り立ちます。当然他者というのは自分達でコントロールできる存在ではないので、他者との関わりの中で、試合では当初思いもしていなかったことが起こります。

その1つが、成長です。

スラムダンクでは、桜木を筆頭にあらゆる選手が実戦の中で上達し、練習以上の力を発揮するようになります。

これは相手が必要な、スポーツならではの特徴に思えます。例えば学校の試験では、試験時間で急激に成長し実力以上の成績が取れること、はまずありません。世の中、「練習してきたことを、なるべく100%出す」ということが多いのではないでしょうか。

しかし、スポーツは異なります。相手と揉まれる中で、「今、この瞬間」にも成長できるのがスポーツであり、「練習してきた以上の120%が出る」という感覚はスポーツでは珍しくありません。

スラムダンクではどの選手達も試合の中でメキメキと成長する様子が描かれます。試合前は実力的に絶対に勝てないと言われていた相手にも、試合中に成長することで打ち勝つのです。

他者がいる本番で起こる自分の成長を、決して過小評価しないこと。
このことを、リアルタイムで成長し限界を越え続ける選手達は、教えてくれている気がするのです。

道徳の教科書:スラムダンク

以上、スラムダンクの魅力を紹介してきました。

まだ読んだことのない方は、ぜひ読んでみていただきたいです。

上記のように、スラムダンクはただのバスケット漫画ではありません。

正直、バスケでなくても良いかもしれません。
スラムダンクの核は、初心者桜木の成長と共に味わう、あの青春であり、あの努力であり、人間ドラマです。

僕は本気で、スラムダンクはそのまま道徳の教科書として文部科学省が採用するべきだと考えています。

作中では何人ものキャラクターが登場し、その誰しもの感情が繊細に描かれています。
そのためスラムダンクを読むと、何歳になっても、人生のどのステージにいるときでも、必ずどれかのキャラクターに感情移入ができます。

各キャラクターのらしさが表れている名言と別の記事ではまとめてあります。

いつ読んでも学びがあり、物語の展開を読者の人生に重ね合わせることを通じて、読者に人生を見つめ直すきっかけを与えてくれます。

まだスラムダンクを読んだことのないみなさん、そして過去に読んだことのあるみなさん、ぜひこの機会に、バスケをテーマに執筆された道徳の教科書を読んでみてください。

スラムダンクの新作映画のレビューは以下の記事にあります。

アニメは↓から見れます。


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