今回は、前回の記事の続きで、スラムダンクにおけるキャラクターの名言を紹介していきます。
前回の記事をご覧になっていない方は、ぜひ読んでみてください。
スラムダンクは、湘北メンバーだけでなくあらゆるキャラクターが繊細に描かれています。
キャラクターのらしさが出ているセリフを、今回も1キャラ=1セリフで選定しました。
陵南高校
魚住 純(うおずみ じゅん)
陵南のキャプテンであり、センターである魚住です。
身長202cmという、ビッグマンが多いスラムダンクにおいても異質なデカさです。
背の高さ、ポジションがセンター、そしてキャプテンということから、赤木とライバル関係のように描かれていました。魚住にとっては残念なことに、実力的には赤木の方が一枚上手ではありましたが、県内では高さとパワーで赤木に真っ向勝負ができる唯一の選手でした。
赤木との最大の違いは、得点力だったと思います。赤木はゴール下から得点を量産できる選手である一方、魚住は不器用な選手であり、オフェンスで活躍するシーンはあまりなく、フリースローも決まりません。
魚住自身も、赤木の得点力は天性のものであり、赤木に得点では勝てないと認めています。
一年の頃は体力もなかったようで、「背が高いだけで大したことがない」と、周囲の部員から悪口を言われていたようです。
感情のコントロールも苦手であり、キャプテンとしてチームをまとめるべきところで、審判に激昂して退場処分になったこともあります。
このように、魚住はバスケ選手には欠かせない「身長」という圧倒的な武器がありながらも、流川や仙道のようなセンスを感じられない選手です。
「ここで魚住が踏ん張ってくれれば…」という場面では、大体負けてしまいます。そして、この絶妙な頼れなさが、魚住のらしさだったと思います。
魚住は、バスケット選手個人として見れば、赤木には敵いませんでした。
しかし、魚住の引退試合となった湘北戦では、チームメイトのサポート役に徹することで、赤木率いる湘北相手に勝利目前まで迫りました。
おそらく、魚住は最初からセンスや才能でバスケットをしようとは思ってなかったのではないでしょうか。
背の高さ以外に才能がないことに気づいており(背が高いだけでも立派な才能だと田岡監督に言われる)、天才選手ではないかもしれませんが、魚住は魚住の戦い方があり、自分らしいプレーをすることの大切さを誰よりも気づけていました。
そして後輩である仙道、福田を活かすために魚住自身の体格を使い、攻める赤木に対して魚住らしいバスケを見せたのでした。
湘北がインターハイに出場した際、試合を応援するために魚住はわざわざ現地まで駆けつけてくれます。赤木というかつてのライバルが河田相手に苦しんでいるのを見て、同じように赤木に苦しめられていた、現役時代の自分を思い出したのかもしれません。
観客席からコートに板前姿で降り立ち、大根をかつらむきし、薄くなった大根を赤木の後頭部に切り落とし続けるという勇敢な行動に出ます。
銃刀法違反のリスクを冒してまで、赤木に大根を浴びせるという非常に間接的な伝え方で、赤木に自分がチームの主役にならないプレーをする大切さを訴えました(大根=刺身のツマ=引き立て役=周囲を活かせ)。
見た目以上に頼りなく不器用な男ですが、翔陽VS湘北の予想スコアを神に聞かれる、少しシリアスな展開で放った名言がこちらです。
はらたいらさんに3000点
81話
そうです、緊迫したシーンが多く描かれていたので気づきにくいですが、魚住は多分めちゃくちゃ面白い人です。
単行本でも、「俺はチームの主役じゃなくていい」と発言するフリの後、次のページの丸窓の扉絵では「話の主役であれば」と、大ボケをし一人でトークを落としています。あまりのボケっぷりに、なんと、あの桜木がツッコミにまわっています。
そもそも、試合中に乱入して大根をかつらむきするとは、ごっつええ感じのコントの世界です。
もう少し、魚住の日常を、おそらくロッカールームで大回ししている日常を、覗き見したいものでした。
仙道 彰(せんどう あきら)
今作トップ1,2に入る才能を持つ、天才:仙道です。
本気を出せば誰よりも上手いにも関わらず、相手の力量を見て自分の実力をコントロールするところがあります。そのため、魚住が常に全力で相手にぶつかるのに対し、仙道はプレーを楽しみながら省エネバスケをし、チームが負けそうな時には突然本気を出し始めます。
この脱力感や、バスケットというスポーツそのものを楽しんでいる姿勢はまさに天才のそれであり、仙道は底知れない男です。
海南戦、仙道が自分とチームへ向けて放った名言がこちらです。
さあいこーか
143話
仙道はこのセリフを、色々な場面で言っています。ですが、個人的に海南戦のときの「さあいこーか」が、作中での仙道らしさが最も出ていると思います。
前述の通り、作中でトップクラスの実力を持つプレーヤーで、正直陵南に入学したのが不思議なくらいです。田岡監督が仙道のスカウトが自分の最大のファインプレーだと言っていましたが、本当にその通りです。
仙道がいなければ、陵南は県大会の決勝リーグには進めない選手層だと思います。陵南には派手な選手がおらず、チームメイトの実力と仙道の実力が離れすぎているため、仙道にとっては少し勿体無いような印象を受けます。
キャプテンであり頼りになるはずの2mは、海南戦で審判に文句を言い退場し、湘北戦では入りもしない桜木のシュートにファールしベンチへ。
越野はすぐ交代するので、ボールの運び役も仙道がしなければなりません。
福田はミドルレンジからのシュートが入らないので、遠めから点が取れる選手は陵南で仙道のみです。
このように、オフェンスからディフェンス、ひいてはチームのマネジメントまで、仙道の仕事が多すぎます。これでは流石の仙道であっても活躍が難しいでしょう。彼はまだ2年です。
そんな可哀想な仙道は性格もナイスガイで、変人が多いスラムダンクの中でかなり良い人です。別のチームにいる無名の1年であった桜木を、練習試合の時から微笑ましく見ており、桜木の無礼な態度も笑って受け流します。
プライベートで釣りをした帰りには、仙道を睨みつける流川に遭遇し、先輩なのに自分から流川に挨拶します。そんな流川は「勝負しろい」と、突然1on1の申し出をしてきますが快諾し、暗くなるまで流川に付き合います。
さらには、流川にバスケのアドバイスまでし、このアドバイスのおかげで流川はパスに目覚め、山王戦で活躍します。
才能に釣り合わない不遇な生活を送っているのに、何て健気で良い奴なのでしょうか。
海南戦で孤軍奮闘する仙道が、押されるチームに対してかけた言葉が、上記の言葉です。
チームメイトを落ち着かせるため、そして自分を鼓舞するために発しました。仙道は2年生ながらチームの中心であり、仙台の一声でチームは冷静になります。どんなに劣勢でも、仙道がいれば陵南全員が勝利を諦めません。
才能がありながら驕った態度を取らず、チームのため、献身的な姿勢を貫く仙道は全選手の鏡です。
仙道に負荷がかかり過ぎる陵南のチーム構成でしたので、もし仙道が最初から全力でプレーできていれば、海南も倒せたかもしれません。
バスケの実力、性格の良さ、カリスマ性、全てを兼ね備えた仙道は、まだまだその実力を作中で見せ切れてはいなかったでしょう。
仙道にとっては不利な環境でバスケをしていましたが、その底なしの実力ゆえに「それでも仙道なら、仙道ならなんとかしてくれる」と読者が期待してしまうのが、天才仙道なのです。
福田 吉兆(ふくだ きっちょう)
陵南の秘密兵器、福田です。湘北と練習試合をしたときは謹慎中でプレーできませんでしたが、県大会では点取屋として活躍しました。
FWとしての実力はあるものの、中2の終わりからバスケを始めているためまだバスケ歴が浅く、ディフェンスは上手くありません。
陵南の田岡監督は、福田を見た目だけで勝手に図太い性格と判断し、叱って伸ばすという間違ったアプローチを採用してしまいました。
田岡に怒られ続けた福田は非常に繊細な性格ゆえに、練習試合のときに田岡にブチギレてしまい、貫手の連続コンボを決めます。これが原因で謹慎になってしまい、大好きなバスケを取り上げられてしまいました。
海南戦、点をとりまくり活躍する福田には声援が送られ続けます。
その声援を受けて心の中で呟いた一言が名言です。
もっとホメてくれ
142話
田岡の言う通り見た目は図太そうですが、福田は繊細です。田岡への間違った行動でペナルティを課されてしまいましたが、福田はバスケを諦めませんでした。
三井のように不良になるのではなく、日本には少ないリングのある公園を探しては、練習を続けます。
自らの過ちを受け止めしっかりと反省し、ようやく得たチャンスで結果を出した福田は、もっともっと称賛されるべきかもしれません。
池上 亮二(いけがみ りょうじ)
ディフェンスに定評のある池上です。
海南戦では、ゲーム終盤になんと牧からボールを奪いました。逆にオフェンスはイマイチで、赤木は魚住を抑えながら余力で池上を抑えていました。
湘北との試合の後、試合に負けた3年生は引退することになります。最後のチームミーティングで池上が放った名言がこちらです。
次こそはお前らが全国の切符を手に入れてくれ!!
188話
キャプテン魚住が、感極まり言葉が詰まっている中、池上は上記の言葉をアッサリと言いました。あまりにもアッサリと言ってしまったので、魚住からも驚かれています。
セリフが少なく、人物像の見えにくい池上ですが、ディフェンスが上手です。
一方で得点を決めるシーンはあまり見られませんでした。ディフェンスだけでは、チームを勝たせることは出来ないのです。
そんな池上が、後輩への挨拶だけはしっかり決めました。
デイフェンスとスピーチに定評のある池上と呼んであげましょう。
越野 宏明(こしの ひろあき)
負けん気の強い越野です。
湘北との戦いの最中、越野らしい名言がこちらです。
絶対勝ってやるぜ…!!
182話
負けん気の強さが溢れ出た場面です。越野のハングリーさに、陵南は引っ張られたことが多いのではないでしょうか。
しかし、負けん気以外に特徴が見当たらない選手です。
ディフェンスは三井にチョロいと言われ、オフェンスも活躍している場面はありません。
ギラギラな性格に実力が伴っていないのが、越野の残念な点だと思います。
しかし、陵南にはおそらく必要な選手でした。
仙道はエースですが、大人な選手です。
越野のように感情をむき出しにする選手は周囲に刺激を与えるため、数字には現れずとも、チームにおいて重要な存在なのかもしれません。
植草 智之(うえくさ ともゆき)
安定感があり、スタミナのある植草です。
湘北戦、宮城とマッチアップし続けていた植草は、後半に転倒してしまいます。
その時に発した言葉がこちらです。
あっ!!
172話
スタミナのある植草が、宮城に消耗させられていたのが良く分かるシーンでした。
宮城は、藤真、牧、深津と、チームの顔とも言える選手とのマッチアップが続き、どちらかといえば実力以上の相手に必死に食らいつくような描かれ方をしていました。
しかし宮城VS植草では、今までの鬱憤を晴らすように宮城が圧倒したようです。事実、この転倒を機に植草は交代します。
このように、植草の安定感とスタミナは宮城の成長を実感するためのフリとして使われており、残念な立ち位置でした。
本職はPGですが、仙道の方がPGが上手いようなので、植草の将来は安定していません。
相田 彦一(あいだ ひこいち)
陵南の補欠にしてチェック王、彦一です。
プレーヤーとしての戦力にはなっていませんが、圧倒的な情報収集力で、読者を楽しませました。
選手を見る目は肥えている彦一です。
桜木がまだバスケを始めたばかりの頃、周囲はヤンキーだの素人だの相手にしていませんでしたが、彦一は外部の人間の中で、最初に桜木の才能に気づいた人間かもしれません。
そんな彦一が、桜木との初めての会話で、名言が生まれました。
カ・・・カッコエエわこの人!!自分からチェックしとけなんて・・・わいのチェック人生の中で初めてや!!
23話
桜木を小馬鹿にしているのか、本当に感心しているのか、おそらく後者でしょう。
彦一は仙道のようなプレーヤーになることが目標だとは思いますが、スラムダンクの中では珍しい文化系の人間です。
インターネットも使わずに紙とペンだけで、徹底的に対戦相手を分析します。インターハイに出場する湘北に、湘北の対戦相手を分析したレポートを渡したこともあります。
作中では彦一の分析の中身を見ることはできませんでしたが、一体何を書いていたのでしょうか?
上記のような桜木とのやりとりを見ていても、賑やかで楽しい人です。
「あの仙道と元チームメイトのワイが語る、高校バスケ論入門」のようなブログを書いて、大人気になる日を待ちましょう。
菅平(すがだいら)
魚住の控えセンター、菅平です。
魚住の控えセンターと言っておきながら、なぜか海南戦、魚住が退場した際は出場しませんでした。
高砂は赤木よりもサイズのある選手ではないので、他の選手で対応できるとの判断でしょうか?
逆に言えば、陵南では魚住以外に赤木の高さに対抗できる選手が菅平のみでした。
湘北戦では「スクリーンアウトだ、菅平!」の声援虚しく、赤木にボコボコにされます。
そんな赤木とのマッチアップでこう言いました。
すごいパワーだ…!!
171話
完全なやられ役の菅平。表情もどこか自信がなさそうで、見ていて少し辛くなる選手です。
しかし、彼はまだ1年生です。1年なのにも関わらず、なんとインターハイ出場が懸かった舞台で、赤木とマッチアップするという経験を積めたのです。
この経験は、必ず将来の糧になると思います。
身長は桜木と同じくらいで、赤木とミスマッチと言われていますが、それでも190近くあります。
センターで通用しないとしても、必ずどこか菅平を生かせるポジションがあるでしょう。
板前になった魚住の跡を継いだ菅平は、一体どれほどの成長を遂げるのでしょうか。
田岡 茂一(たおか もいち)
陵南の監督、田岡です。
安西先生と異なりよく喋る田岡は、ベラベラと戦術的な狙いを語ってくれます。
おかげで、湘北戦では「木暮はある程度離しといていい(無視していい)」のような発言を池上にし、赤木にしっかりと聞かれていました。
木暮にボールが渡ってきたとき、「フリーだ打て!」と確信を持って赤木は叫びます。
この一声がなかったら、木暮は思い切って3pを狙わなかったかもしれません。
田岡が軽視していた桜木と小暮に試合を決められ、陵南は敗退してしまいます。
確かな戦術で湘北をあと一歩の所まで追い詰めましたが、その戦術に足元をすくわれてしまうのでした。
敗因を聞かれた田岡は以下のように語ります。
敗因はこの私!!
185話
陵南の選手は最高のプレーをしたと言い、全責任を自分で被ります。
田岡の株が一気に上がった瞬間です。チームにおける理想的なボスですね。
チームが上手くいったときは選手のおかげ、残念な結果のときは監督の責任、このマネジメント力は見習わなければいけません。陵南の選手は、さぞ気持ちよくプレーできたことでしょう。
「ただデカいだけ」と落ち込む魚住へ、勇気づける言葉もかけました。
チーム全体と、チーム個人へも気を配る田岡は、立派な大人です。
もう一つ、田岡の功績は仙道のリクルートです。
三井、宮城、流川のスカウトは失敗しましたが、仙道を連れてきたことは最大のファインプレーです。
陵南に仙道がいなければ、激しい決勝トーナメントへは進出できなかったでしょう。
仙道加入も、田岡の人望ゆえの出来事だったのかもしれません。
海南大附属高校
牧 紳一(まき しんいち)
神奈川No1プレーヤーの牧です。PGながら仙道ばりに点を取りまくり、ディフェンスでは流川を止め、宮城を抜き去るスピードと赤木に負けないパワーを持つ、まさに最強のプレーヤーでした。
初期は謎めいた高圧的な印象がありましたが、物語が進むにつれてどんどんと表情が柔らかくなっていき、山王戦では湘北寄りの立場で実況し続けてくれました。
牧のプレーを見られるのは県大会までなので、あまりプレーのすごさが沢北や深津ほどに印象に残りませんでしたが、インターハイの会場では、牧が全国区の選手であると思い出させてくれるシーンがありました。
岸本に「おいおい牧〜」のように挑発された時の牧の名言がこちらです。
…すまん 誰だっけ君?
199話
こんなにも「すまん」が違和感のない高校生は牧くらいでしょう。
おそらく牧は挑発ではなく、本当に誰か忘れてしまったので聞いているのだと思いますが、牧の大物ぶりが感じられるシーンでした。
プレーヤーとしての牧はスロースターターで、尻上がりに調子を上げてくる傾向があります。しかし、この時は岸本の挑発に対して、瞬時に見事な返しを披露しました。
一流選手の余裕溢れる名言です。
湘北戦では、後半途中から本調子になるという、レジギガス並のスロースタートでした。おかげで前半で既に消耗している宮城は牧を止められませんでしたが、もし牧が最初から全力を出せるようなクイックスターターであれば、湘北は大差で負けていたような気がします。
また、牧が率いる海南は全国でも有名な強豪校で、その海南のオフェンスは8割が牧から始まっています。湘北も牧相手には大苦戦で、安西監督は牧に4枚マークをつけるほどでした。
海南は湘北が出場したインターハイで全国二位になっており、牧を中心としたオフェンスは全国でもトップレベルであったことが暗に示されています。湘北と海南は物語の中盤で戦いましたので、成長した湘北であれば海南相手にどんな試合ができたのか、気になるところです。
しかし、牧のプレーを見る機会は物語の中盤までです。その後のインターハイ編では、牧は名解説者として活躍します。
顔が広く、全国の選手を知っているため、豊玉戦、山王戦の解説を見事にやり遂げてくれました。牧の解説のおかげで、どこが勝負所か、どのプレーがどう凄かったのか、分かりやすく読者に教えてくれました。
牧のせいで湘北は県二位になってしまいましたが、牧のおかげで湘北バスケ部の魅力が伝わりました。
清田 信長(きよた のぶなが)
海南の1年ルーキー、清田です。
1年生ながらあの海南でスタメンを勝ち取っている、大物ルーキーです。
身長178cmとバスケットプレーヤーの中では小柄ですが、運動能力を活かした跳躍力で、ダンクを叩き込みます。
なんとあの魚住の上からダンクを決めたこともあります。
野生的なカンもあり、三井の虚をついた3pを止めました。
県大会、インターハイと注目の的でしょう…となるはずでしたが、なんと同学年、同じ県には流川がいました。
流川は終始清田を圧倒しており、流川の圧倒的な存在感の前で清田の凄さは薄れていました。
初期こそ流川・桜木のライバルになりそうな大物感が漂っていましたが、流川とのマッチアップで清田は相手にならず、格の違いを流川に見せつけられてしまいました。
そもそも、海南の1年エースより格上の選手が、名もなき公立高校に入学しているのがおかしいのですが、清田はプレーヤーとして活躍するシーンはあまりありませんでした。
一方で、牧同様にインターハイでの解説者として活躍してくれます。
山王戦、流川がパスを出すシーンを見て以下のように教えてくれました。
あの…天上天下唯我独尊男がパスを!!
259話
「流川が1on1の場面でパスを出した」という事実が、いかに今までの流川からは考えられない行為かを、非常に端的に説明してくれました。
パスを覚えた流川を印象づける重要な解説であり、この解説のおかげで今まで流川には何が足りなかったのか、そして山王戦の流川のプレーがどれほど効果的なのか、読者は理解することができます。
牧がゲームの流れ全体を見た上での解説者であるのに対し、清田は1年ですので、同学年の流川、桜木の解説が主な仕事です。
流川のプレーがどれだけすごいのか、桜木がどれだけ驚異的な速度で成長しているか、清田は教えてくれました。
プレーでは流川に勝りませんでしたが(本人曰く体力だけは流川より上らしい)、牧が引退した後の名解説者の座は、清田か彦一のものになるでしょう。
神 宗一郎(じん そういちろう)
正確無比の3pシューター、神です。
苗字の通り、神のような得点力で、神が打ったら必ず3点が入ります。県大会では、一試合平均30.3得点で、流川を抑えて得点王でした。
ハーフラインくらいからでも点が入ってしまうので、バスケというゲームを根底から破壊するプレーヤーだと思います。
そんな神が、湘北との対戦で宮益に向けたコメントを名言に選びました。
努力してましたから… 宮さんは…
まず、神はかなりの努力型です。
海南という強豪校の練習をこなしながら、1日500本のシュート練習を毎日行います。
身体能力が高くない描写がありますが、反復の天才であり、機械のように正確な3pシュートで点を取りまくります。
そんな努力を重ねている神が、先輩の努力を讃えて上記のセリフを発しました。
神は誰よりも努力をしていますが、謙虚で優しそうな人柄です。
この場面では、「自分も努力している」という事実を横に置いておいて、素直に宮益の努力量を称賛していました。
他にも、試合の途中から神が投入されるときに、実は神が待ちくたびれていたことが明らかになりました。
このように、牧や清田のように分かりやすく主張せず、また闘争心も出さない温厚な人間です。
しかし、内に秘めた闘志は熱いものがあり、パスを受ければ必ず点を取ります。
この外からみた印象と中身のギャップが、神の魅力でしょう。
高砂 一馬(たかさご かずま)
ゴリと見た目そっくり、高砂です。
全読者が思ったであろう「ゴリと似ているなあ」という感想は、桜木が試合終了直前、ゴリと間違えて高砂にパスを出してしまうミスで伏線回収されました。
この回収の仕方は見事でしたね。
湘北VS海南は、桜木が初めて公式戦で退場しなかった試合でもあります。翔陽戦を経て、桜木は明らかに海南戦で成長していました。
そんな桜木の成長が伺えた、高砂の名言がこちらです。
あいつを素人とは考えない 赤木級のプレイヤーのつもりであたる
128話
このセリフによって素人:桜木が、ついに県の強豪校相手に認められるほど成長を遂げていることが示されました。同時に、赤木が偉大なプレーヤーだという前提が含まれており、赤木への最大級の賛辞になっています。
桜木はもちろんですが、赤木も、この県大会で湘北の躍進が始まるまでは無名でした。
無名の公立高校にいる無名の選手が相手なので、あの王者海南であれば、少しくらい侮った態度を見せそうなものですが、高砂含め海南は名前で人を判断することはしませんでした。
上記の高砂から出た桜木評は、桜木が県内におけるトップレベルのバスケットプレーヤーに仲間入りしたことを示唆しており、あまりの成長ぶりに全読者が震えたのではないでしょうか。
また「お前は全国トップレベルのセンターだぞ…多分…」と河田とマッチアップする赤木を評価したりと、赤木へのリスペクトを惜しみません。
牧も赤木のことを「敵のプレーヤーとして初めて尊敬する」と言っており、赤木は海南から大人気です。
高砂は牧や清田のように饒舌な解説はありませんでしたが、客観的に湘北のメンバーの実力を読者へ教えてくれました。
武藤 正(むとう ただし)
海南のメンバーの中では、三井を厳しくチェックする背番号8番と同じくらい影が薄い、武藤です。
山王と湘北の試合を見ながら、松本へ向けた武藤の名言がこちらです。
沢北がいなきゃどこでもエース張れる男さ
236話
松本も、沢北に隠れる影の薄い選手でした。
そんな松本の気持ちが分かるのか、影の薄い武藤が松本のポジティブキャンペーンをしてくれたのでした。
宮益 義範(みやます よしのり)
努力していた初心者、宮益です。
湘北戦で公式戦初出場を果たしました。しかし基本的に戦力として数えられてはいません。
見た目は桜木の言う通りザコで、身体能力も低いですが、努力家でシュートが上手いです。
宮益の名言がこちらです。
さあ来ォい桜木!!
108話
高頭の作戦が見事にハマり、桜木が為す術なく抑え込まれました。
初心者:桜木が湘北にいてくれたおかげで、宮益も試合に出場でき、上記のような絶対言い慣れていないであろうセリフを放つことができました。
あまりにも宮益らしさがないセリフですが、それが逆に宮益の高揚感を伝える働きをしており、名言に選定しました。
「シュートだけなら、神をのぞいて、海南でナンバーワン」と、かなり条件を絞ってのナンバーワンですが、努力量は作中ナンバーワンでしょう。
あの海南で初心者ながら試合に出場できた、激レアさんです。
高頭 力(たかとう りき)
知的で戦略家な高頭。陵南の田岡とはライバル関係です。
まさに王者海南を率いるに相応しい戦術眼で、桜木の弱点を秒速であぶり出し、桜木をベンチに追いやりました。
どうやら山王相手のプレス対策も練っていたようで、用意周到な監督です。しかし、湘北と戦った際は翔陽と対戦するとばかり思っていたため、何も調べてきませんでした。
湘北は比較的アドリブで勝負するタイプなので、準備不足の高頭様様だったでしょう。
あそこまで接戦に持ち込めたのは、三井だけにチェックを厳しくし、流川をノーマークにしていた高頭のおかげです。
湘北相手には宮益に桜木をマークさせる以外の仕事はしてませんでしたが、インターハイでは全国2位になっていたので、その手腕は確かなのでしょう。
海南の選手に対する高頭の評価が名言です。
海南に天才はいない だが海南が最強だ!!
120話
スラムダンクでは、才能に恵まれた「天才」が何人も出て来ます。桜木、流川、仙道、沢北…
しかし、県内最強・全国二位の海南には、天才はいないのです。
基礎基本を大切に、ハードな練習に取り組み続けているのが海南の選手であり、県内中の才能のある高校生が集まりますが、スタメンは天才ではない選手で構成されています。
常勝軍団:海南の全員が、天才ではない努力型の選手であるというのは、スラムダンクらしいと思うのです。
翔陽高校
藤真 健司(ふじま けんじ)
翔陽のキャプテン兼エース兼監督という、異色のキャリアを歩む藤真です。
海南と並ぶ力を持つ強豪が翔陽であり、優勝候補二番手に位置付けられていました。
藤真の評価も当然高く、牧に一歩劣るものの、県トップのPGとして牧のライバル関係にありました。
藤真のいない翔陽は普通の強豪ですが、藤真が他のメンバーを活かすことでインターハイ常連レベルへと引き上がります。
しかし、湘北戦では藤真がプレーヤーに100%集中できない状況が足を引っ張ります。
湘北に負けた後、藤真が、仙道VS牧の戦いをコッソリと見ながら漏らした感想が名言です。
オレのいないところでNO.1争いをするなよな
147話
湘北、陵南の躍進により県内が群雄割拠の時代へ突入し、優勝候補の一角であったはずの翔陽は、無名校である湘北に負けてしまうのでした。
決勝リーグにすら進めないまさかの展開で、読者以上に驚いたのは藤真だったことでしょう。
前評判が高かった分、藤真も翔陽も期待以上の活躍ができなかった結果は大変残念であり、藤真にはどこか負のオーラがつきまとってしまいます。
1年の頃から注目を集めていた藤真は、赤木が3年になってようやく評価されたのと対照的に、若い頃から注目を集めるものの最後に結果が出せませんでした。
さらに、1年の頃からの注目はあくまで「牧のライバルとして」であり、神奈川NO.1の牧と比較されてのものでした。
つまり、藤真は常にNO.2であり続け、最後にはそのNO.2の座すらも奪われてしまうのです。
不運なことに、応援団も多く優勝候補である翔陽には、監督がいませんでした。
藤間がキャプテンをこなしながら監督もするという、モイーズを追い出した直後のマンUもびっくりな采配です。
湘北との試合中、三井の躍動、1年コンビ桜木・流川の計算外の活躍により、藤真は段々と表情が険しくなっていきました。負けた直後、藤真は「ありがとうございました」と言いながら、静かに涙を流してしまいます。
通常の選手であればキャプテンであるだけでもプレッシャーを感じるでしょう。
しかし、藤真はキャプテンとして、エースとして、そして監督として、チームの敗退の責任を感じていたのではないでしょうか。
牧には勝らずとも、エースキラーの肘振りにも臆することのない全国レベルのプレーヤーだっと思います。
「3年生、最後の夏こそは牧を越えたい」と、毎日一生懸命に練習を重ねていたことでしょう。
その挑戦権すらも無名の湘北に奪われ、敗退の責任を一身に背負い、藤真のいないところでNO.1争いが始まります。
藤真は、スラムダンク最大の悲劇のヒロインだったのではないでしょうか。
顔つきは美形で女性にはとてもモテるようなので(牧はフケているため全くモテないはず)、テレビ映えは藤真で間違いなく、解説者を始めたら牧を超えるかもしれません。
花形 透(はながた とおる)
翔陽の技巧派センター、花形です。
赤木が剛ならば柔の花形は、赤木・魚住とは異なるテクニカルな技で湘北を苦しめました。
藤真の頼れる相棒として活躍しますが、インサイドにおける桜木、赤木との争いに負ける形となってしまいました。
桜木のリバウンド、高いジャンプ力を見た花形は、以下のように述べました。
あっという間にこのオレや赤木よりも上へ…!!
88話
桜木は以前からリバウンドの素質を見せており、この翔陽戦でリバウンダーとしての才能が開花しました。
試合前は翔陽が優位だと思われていましたが、桜木の予想外のリバウンド力、電撃加入した三井の3pにより、湘北は番狂わせで翔陽に打ち勝ちました。
桜木は県内屈指のセンターを凌駕するリバウンドを見せ、花形は驚愕します。
翔陽戦が桜木最後の退場試合となり、この試合を境に桜木はリバウンダーとして湘北に欠かせない戦力となりました。
花形にとっては悔しい試合だったと思いますが、このセリフによって桜木の才能が明らかになり、湘北と桜木の躍進への一歩が始まるのでした。
長谷川 一志(はせがわ かずし)
翔陽で誰よりも練習を頑張って来た、長谷川です。
試合前は三井を5点に抑えると意気込んでいましたが、ついこの前まで不良をやっていた元MVPに20点取られてしまいました。
三井に対し、クールな長谷川が放った言葉が名言です。
高校バスケットをナメるなよ三井!!
48話
長谷川は中学の頃三井と対戦し、三井を止められませんでした。
その後、誰よりも練習を頑張っていましたが、不良になった三井を町で見かけます。驚いた長谷川が三井を見ていると、不良三井に怒鳴りつけられました。
そんな愚行を重ねて練習をしてこなかった三井が、死ぬほど練習を頑張ってきた長谷川の前でのうのうとプレーしているのです。
長谷川が上記のように怒りを見せるのも納得でしょう。不良をやってブランクがある三井に負けるわけにはいきません。
後半序盤こそ三井は長谷川に抑え込まれますが、徐々に三井が点を取り始め、最後は三井の力に屈しました。
藤真に次ぐ、翔陽の無念系キャラでしょう。
長谷川の練習量を三井の才能が上回ってしまった瞬間は、読者も複雑な気持ちになったのではないでしょうか。
永野 満(ながの みつる)
翔陽の3年生ビックマン、永野です。
背は高いですが、流川を筆頭に湘北のオフェンス陣に翻弄され続けます。
湘北に負けた後、永野は高野と海南VS湘北の試合を観戦していました。
高野が「桜木は素人だったのか」と気づき、悔しがっている中、永野は以下のように語りかけます。
「オレたちは負けたんだ、その素人に…」
106話
桜木を認め、自分達の力不足を嘆く大人な永野。
湘北目線から見ると嬉しい勝利だった反面、翔陽の敗退は、どこかやり切れない勝負の辛さを感じさせます。
高野 昭一(たかの しょういち)
翔陽の3年生ビックマン、永野の相方:高野です。
強引に向かってくる流川に対し、高野は以下のように吐き捨てます。
一年坊が!!
84話
流川を空中で叩き落とすかと思いきや、流川の技術が高野を上回り、得点を取られてしまいます。
その後も、流川の得点、桜木のリバウンドと終始1年に圧倒される、3年の高野・永野コンビ。
初期の威勢の良さがフリとなり、見事な湘北のやられ役になってしまいました。
三浦台高校
村雨健吾(むらさめけんご)
湘北の県大会初戦の相手が、三浦台高校です。
無名の湘北を格下だと思い、強気で攻めて来ました。
しかし、宮城、三井、流川が加入した湘北は赤木を止めれば勝てるチームではなくなっていました。
三浦台のキャプテンが村雨です。
試合中は桜木に脳天にダンクを決められる不幸な村雨ですが、敗退後は湘北の試合を観戦しています。
桜木のプレーを見ながら放った言葉が彼の名言です。
あの桜木 この大会中に驚くほど進歩したな…
152話
脳天ダンクを決められた桜木を恨むことなく、素直に賞賛している男:村雨です。
昨日の敵は今日の友。
対戦相手を賞賛できるスポーツマンシップが、スラムダンクの清々しさの1つですね。
次回はインターハイ編
また記事が長くなってしまったので、続きは別の記事に書こうと思います。
次回は激アツ試合が目白押しのインターハイ編です。
ぜひ読んでいただきたいです。
アニメは↓から見れます。