ドラゴンボールはあまりの人気ゆえに派生版がいくつも登場していますが、今回は原作であるコミック全42巻で発表されているドラゴンボールを扱います。
悟空初登場時の年齢が12歳、最終話での年齢が47歳なので、悟空の35年間の人生を描いた漫画ともいえます。物語の進行とともに悟空が子供から大人に、弟子から師匠にと成長していく点が魅力の1つです。
ドラゴンボールは孫悟空少年編、ピッコロ大魔王編、サイヤ人編、フリーザ編、人造人間・セル編、魔人ブウ編と6つのエピソードに分けられます。
本記事では各エピソードを振り返りながら、どのような面白さがあったのかを振り返りたいと思います。
※本記事はネタバレを含みます。
孫悟空少年編〜ピッコロ大魔王編
孫悟空少年編
物語の始まりである孫悟空少年編は、7つ集めると願いが叶うとされるドラゴンボールを探す道中を描いたギャグ漫画でした。
12歳の悟空が16歳のブルマと出会い物語が始まります。2人でドラゴンボールを探す冒険をしながら敵を倒し仲間を集め、ギャグシーンはほぼセクハラという冒険ギャグ漫画です。
当たり前のように喋る怪獣が登場したり、ウサギ団という敵を如意棒で月まで連行したりと、ギャグ要素が強く突拍子もない出来事が多々起こるため、後のエピソードと比較し物語の雰囲気は全く異なりまが、作中の終盤まで重要になるキャラクターや設定が多く登場します。
全てのキャラクターはエピソードを経て時間の経過と共に成長するため、まだあどけないキャラクター達と出会えるのが孫悟空少年編の特徴です。
86話で桃白白が登場し始めた当たりで本格的な殺しが描かれ、悟空は桃白白を相手に初の完敗を喫します。その後カリン様の元で修行し強くなり、桃白白にリベンジを果たし乗り越えます。
このように、修行→強敵と対面→さらに修行→敵を倒す→修行が、孫悟空少年編のみならず、作中を通して物語の基本的な流れとなります。
ピッコロ大魔王編
ピッコロ大魔王編が始まる133話、クリリンがピッコロ部下に殺害されたことをきっかけとして、突然ギャグテイストだった漫画がシリアスなバトル漫画へと流れが変わります。
圧倒的に強いピッコロ大魔王によりあの神龍までもが殺され、亀仙人も勝てず、悟空も負け、本気の世界征服が始まる展開は恐ろしさを感じてしまいます。
ただそこから始まる本気のバトルは面白く、バトル漫画としての面白さが際立っていきます。
ドラゴンボールと言えば次々と敵が登場し話のスケールも大きくなり、戦いが次々と巻き起こるサイヤ人編以降のイメージが強いですが、孫悟空少年編、ピッコロ大魔王編は戦闘力だけに寄らない面白さがあります。
亀仙人や餃子の催眠術、アックマンのアクナマイト光線といった奇術的な技が多く、亀仙人の魔封波、天津飯の四身の拳、ヤムチャの操気弾は使用者よりも戦闘力が高いであろう相手にも一泡吹かせました。
ピッコロ大魔王編の最終盤、亀仙人が「たった一個のドラゴンボールからすべてが始まり そして世を守ったのです」と綺麗に物語を総括し、チチという誰もが忘れていた初期キャラクターと悟空が結婚しピッコロ大魔王編は終了です。
孫悟空少年編、ピッコロ大魔王編には、少年だった悟空が大人になり顔つきも体格も変わり、分かりやすく成長する魅力があります。そして最初から悟空より強い者はおらず、ピッコロ大魔王編からシリアスな展開はありますが、どんなに強い敵であろうと、悟空が修行し、悟空の力でボス敵を倒すというのが救いであり爽快です。
サイヤ人編以降、悟空はボス敵への勝率が悪くなり、一対一の戦いでボス敵を倒す悟空を見られるのは孫悟空少年編、ピッコロ大魔王編以降はほとんど見られなくなります。
悟空が強いという分かりやすくも頼もしい主人公像を確立し、サイヤ人編以降も重要になるキャラクターや設定を理解できるのが孫悟空少年編、ピッコロ大魔王編となります。
サイヤ人編
悟空に悟飯という子供が誕生した驚きから物語は始まります。
一方で残念なことに、初期から個性的なキャラクターで物語を盛り上げていたランチさんが失踪しており、今後二度と現れることはありません。
今までは地球だけで起きた物語だったものの、悟空がサイヤ人という宇宙人だと発覚し、話が地球だけに留まらず宇宙規模となります。さらに悟空は、あの世で宇宙を統治する界王様と修行することになり、現世や生の概念も超えます。
また敵の強さが大きく引き上がったことで、修行しても追いつけずに戦いから脱落する戦士が多発し始めるのもサイヤ人編の特徴です。
ラディッツが前エピソードまで作中2位の強さを誇ったピッコロに「くだらん技だな ただホコリをまきあげるだけか」と言い放った時の絶望感、そしてそのラディッツよりさらに強い2人のサイヤ人が地球に来ると知った時の絶望感は、クリリンが死んだピッコロ大魔王編を超えるかもしれません。
他方で、前エピソードで敵であったピッコロから悪の心が薄れ、悟空とは共闘し、悟飯の師匠になるというかつての強敵が味方になる展開には心が踊ります。
しかし、212話で神龍が「神の力を超える願いはかなえられん」と発言し、218話で天津飯が「餃子はいちどドラゴンボールで生き返ってる もうにどと生き返れないんだぞ」と言うなど、7つ集めると願いが叶うという物語の根幹であるドランゴンボールに弱体化が見られるようになります。ただ、そのドラゴンボールで不老不死になりたいとする欲望がベジータ、ナッパを突き動かし地球に呼び寄せるため、ドラゴンボールを巡る戦いという点は以前までのエピソードと共通です。
今エピソード特有なのは、誰もボス敵に勝てないことです。
修行して強くなったはずの天津飯、餃子、ヤムチャ、そしてあのピッコロまでもがナッパとサイバイマンに殺され、今までの敵とは異次元の強さであることが明白になります。
あの悟空が修行しても勝てなかった初の相手がベジータであり、悲しいことに悟空が最強の座から降りることになります。瀕死のクリリン、悟飯、奇襲のヤジロベーと力を合わせてなんとかベジータを地球から追い返しますが、強くなったはずの悟空が負けるという衝撃的な展開が印象的です。
そしてこの戦いをきっかけに、今まで長く悟空と共闘し切磋琢磨してきた天津飯、餃子、ヤムチャ、ヤジロベーの地球組は第一線から退くことになります。
ベジータは戦闘中にクリリンの身のこなしを見て「動きだけはなかなかのものだ」と評します。悟空の影に隠れながらコツコツと修行を頑張ってきたクリリンが、サイヤ人編最強のベジータに褒められる場面は、全地球人の誇りなのではないでしょうか。
ベジータはその後も悟飯と殴り合いながら「たいしたチビだが、そろそろ限界らしいな」と発言するなど、戦闘力に対しては素直に反応する性格が垣間見えます。
サイヤ人との戦闘の中で、まだ4~5歳の悟飯がポテンシャルを見せひょっとすると悟空以上の大器なのでは?と感じさせ、「ドラゴンボールが地球以外の惑星にも存在するかもしれない」とクリリンがクレバーな推理を見せます。
悟飯の潜在能力とクリリンの頭脳が希望のきっかけとなり、フリーザ編に繋がります。
フリーザ編
前エピソードまで地球だけで起こってきた物語が、ついにナメック星という他の惑星まで広がります。地球にあるドラゴンボールではなく、ナメック星にある本場のドラゴンボールを手に入れるために、ベジータ、フリーザ軍、地球組がナメック星に集まります。
人造人間・セル編以降、ドラゴンボールは悟空達を手助けする補助的な道具へと格落ちしてしまうため、どんな願いでも叶うドラゴンボールを集めるという原初のゲームが話の中心にある最後のエピソードです。
未知の星への冒険、ドラゴンボールを巡る敵味方が入れ替わる戦い、戦力的に劣る味方戦士達の局地戦、そしてみんなが待ち侘びる強い悟空。ついに悟空はベジータを超え、フリーザを倒し、最強の座に帰ってきます。
サイヤ人編はバトル要素が強い物語でしたが、このようにフリーザ編は、今までのエピソードを踏まえ初期の設定を活かしながら、お馴染みのメンバーが異次元に強い敵を相手に活躍する物語です。
ドラゴンレーダーを頼りに異星でドラゴンボールを集める地球組からは、かつての冒険を思い出させ、今作で初めて描かれるフリーザ軍とベジータの争いという敵同士の戦いも相まって、ドラゴンボールを巡る争いは最高潮に高まります。
フリーザとベジータはドラゴンボールを集めて「不老不死になりたい」とピッコロ大魔王と同様に悪役お馴染みの欲求で行動しており、地球組は「仲間を生き返らせたい」とこれもまた公式通りの使用用途であり、分かりやすい欲求同士がぶつかり合うため良い意味で物語が複雑化せずに楽しめます。
サイヤ人編の大ボスであったベジータが何度も負けてしまうといった、さらに強さの次元が上がる戦いとなります。
天津飯、餃子、ヤムチャが実質リタイアする中、クリリンが前線で主力として奮闘し、相変わらずポテンシャルを魅せる悟飯とクリリンとのコンビネーションは、かつての悟空とクリリンを思い出させます。
「宇宙最強のフリーザ」「フリーザには誰も勝てない」とエピソード序盤から強調されていた前振りを裏切らず、変身する度に戦闘力を上げていくフリーザは圧倒的で、この絶望感は作中随一です。
フリーザとその部下達の手強さが地球組とベジータを団結させる姿は、ラディッツ襲来をきっかけに悟空とピッコロが徐々に仲間になっていった時の胸の高鳴りを思い出しますが、フリーザはラディッツと異なり付け入る隙も与えません。
フリーザにまつわる絶望を以下にまとめました。
・遠くから見ただけでクリリンと悟飯の震えが止まらない
・修行した界王拳悟空の戦闘力が18万であるのに対し、ネイルに「私の戦闘力は53万です」と桁違いの強さを言い放つ
・フリーザ第一形態と全力のベジータが何とか渡り合えそうだと思った瞬間、変身し無双するフリーザ第二形態。
・フリーザ第二形態とネイルと同化したピッコロが何とか渡り合えそうだと思った瞬間、「このフリーザは変身をするたびにパワーがはるかに増す・・・その変身をあと2回もオレは残している・・・その意味がわかるな?」と変身し無双するフリーザ第三形態
・既に誰にも勝てないのに第三形態から最終形態へと変身し、戦いが好きなベジータを戦意喪失させる
・フリーザの50%の力に勝てない悟空に奥の手を期待するも、実は悟空は10倍界王拳を既に使ってた
・宇宙にある星々から集めた元気玉をもっても起き上がるフリーザ
宇宙一の強さという肩書きを裏切らず、前振り・前評判通りのフリーザは今まで以上に圧倒的な強さを誇りました。
そんなフリーザを相手に、これも何度も前振りがあった超サイヤ人に作中初めて変身した悟空が勝利した時、ようやく悟空がナンバーワンに戻ってきたのだという嬉しさと安心感を感じることができます。
ドラゴンボールを求める冒険という過去エピソードの魅力や設定、キャラクターを軸にしながら、願いを叶えたい者達による三つ巴の探り合いが徐々に力と力の単純なぶつかり合いへとなり、リアルタイムで強さを増す敵味方の戦いという、フリーザ編ならではの面白さも加わります。
そしてフリーザ編序盤からの綿密な前振りを全て回収する物語の設計と、ドラゴンボールという物語の面白さが凝縮したエピソードだと思います。
人造人間・セル編
さらに物語の規模が大きくなります。
サイヤ人編、フリーザ編では宇宙、あの世まで広がりましたが、本エピソードでは過去・未来と異なる時間の次元まで広がりました。
ベジータとブルマの息子であるトランクスが未来からタイムマシンに乗ってやって来ますが、そのタイムマシンを制作したのはブルマです。ブルマは地球より文明が進んでいるはずのフリーザ軍でも作っていないドラゴンレーダーを16歳頃に完成させているなど、以前から科学者としての片鱗は見せていましたが、ついにはタイムマシンも完成させ、地球人でありながら技術力でどんな強者や界王にも負けない独自のポジションを確立させた印象です。
人造人間・セル編は過去・未来という別次元が誕生することで話が少し難解になり、未来で経験したはずの過去と現在が異なることで謎が生まれ、ミステリー要素が強いエピソードです。
346話で「みんないったいなにと戦っているんだ」とトランクスが彼の知る人造人間とは別物の人造人間19号、20号を見て放った場面を筆頭に、なぜか存在する苔が生えている2台目のタイムマシン、その周辺にある何かの抜け殻、それを見て震える神と、純粋な敵の強さを目の当たりにした時とはまた違う謎を追いかける怖さがあります。
また、ピッコロ大魔王の世界征服、サイヤ人やフリーザの不老不死といった分かりやすい目的とは異なり、本エピソードのボスであるセルの戦いには目的がありません。ただ楽しむためだけに殺戮を行っており、ボス敵にも独特な不気味さがあります。
366話で神と融合したピッコロを相手に「神コロさま」と発言した悟空は、いつぶりか分からない待望のギャグシーンでした。第一形態セルが街に現れ民間人を殺害する中、セルの出現を天空の宮殿から探るのではなく、テレビニュースで知る神コロさまがボケていたのかは分かりません。
敵と味方の強さがインフレする展開はさらに拍車がかかっており、最強の座が激しく入れ替わります。フリーザ編と人造人間・セル編を比較します。
フリーザ編
・フリーザ→悟空
人造人間・セル編
・悟空≒未来トランクス→ベジータ→人造人間18号<17号≒ピッコロ→強化版セル第1形態≒人造人間16号→セル第二形態→ベジータ≒トランクス→セル完全体→悟飯
本エピソードが斬新な点は、悟空が主力ではないことです。
悟空は心臓病で寝込んでおり、悟空不在の中で戦闘を担うのはベジータとピッコロです。セルゲームが始まり悟空は初めて全力の戦いを見せますが、もう最強の悟空はおらずセルに圧倒的な差を見せられ、そのセルを今までポテンシャルを感じさせていた悟飯が才能を爆発させ凌駕します。
ついに師匠のピッコロ、そして父を超える悟飯の成長は嬉しくもあり、古参読者からは悲しくもあったと思います。
インフレする強さに対し、ドラゴンボールのブランド力は低下しています。もはやドラゴンボールを求める悪者はおらず、セルゲーム直前にお情け程度にドラゴンボールを単独で集める悟空の姿や、417話で神龍が「あ…あの…ふたつめの願いを待ってんだけど………ず~っと……」と情けなく発言するコメディ神龍からは、ドラゴンボールを求めるというフリーザ編まで物語の中心であったゲームへの魅力が失われた様子を察せます。
人造人間・セル編ヒーローは、間違いなく悟空を超えセルも超えた悟飯です。超サイヤ人2に変身した時の悟飯はビジュアルも含め、抜群の格好良さを誇ります。
悟空は前述のように心臓病で寝込んでいたこともあり、いつものように戦っての活躍ではありませんでしたが、悟飯への修行や自己犠牲という形で今回は裏方としての役割を真っ当しました。
そして、裏の主人公はベジータだと思います。フリーザ編のベジータは悪役が拭いきれず、罪のない人を多く殺しては悟空を裏切り、最終的にはフリーザに勝てず悟空に泣きつくといったように一貫しない態度でした。しかし、人造人間・セル編のベジータは悟空(カカロット)を超えたいとするライバル心を剥き出しにすることで、ベジータのらしさと成長が随所に見られ、今エピソードでベジータファンになった方も多いのではないでしょうか。
長くなるので、ベジータについては別の記事でまとめます。
超人同士の戦いとなった物語で異彩を放つのが(人間の)世界最強ミスターサタンです。サタンは忘れられてたギャグシーンを提供すると共に、従来のキャラクターとはまた違う姑息さ嘘、それらで塗り固められた人望と時折見せる勇気により物語をかき乱します。
サタンは世界最強とのことですが、超天空×字拳を操るナムに勝てるのか、孫悟空少年編で天下一武道会に出場していた選手より強いのか気になるところです。
サタンとサタンを取材するリポーターのおかげで、限界を超え続ける戦士達の戦いを見る一般人の声が意識されるようになり、セルゲームは本物の天下一武道会のようになりました。
悟飯が超サイヤ人2になるきっかけは、悟飯と会話していた人造人間16号がセルに踏み潰されたことでしたが、その人造人間と悟飯に会話の機会を与えたのはサタンでした。勝利へのアシストのアシストをしたサタンは、次のエピソードでは話の中心人物へと大出世します。
魔人ブウ編
セルゲームから7年後の世界が舞台で、地球での何気ない日常を舞台に物語が始まります。
主人公は悟空から悟飯へと一時的に交代しており、悟飯という超人が学校に行き日常生活を送る中で、隠せない超人ぶりが何度も周りの一般人を驚かせてしまうという、本作ではありそうでなかった描写が見られます。
セルゲームではセルを圧倒し、好戦的な言動を見せるといった悟飯でしたが、主人公へと昇格した7年後の魔人ブウ編では、サタンの娘ビーデルに詰められる等ドジキャラになっています。
この魔人ブウ編は過去のエピソードを思い出すような懐かしさを感じる場面が多く、最終エピソードに相応しい、原点回帰のようなエピソードになっています。
人造人間・セル編まではバトル漫画としての毛色が強くなっていましたが、魔人ブウ編では一転し、孫悟空少年編を彷彿させるセクハラギャグ連発であり、悟空が亀仙人の弟子であることも思い出させます。
ゴテンクス、ブウといったコミカルに戦うキャラクターの存在もあり、限界を極め続ける戦いではありますが、シリアスというよりも無邪気で楽しい戦いはまた、孫悟空少年編のようです。当時、物語の雰囲気を一変させた当事者であるピッコロは、かつて世界征服を企んでいた頃の面影はなく、非戦闘員の面白指導者になっています。
孫悟空少年編に登場した占いババの能力で、死んだ悟空が天下一武道会に向けて1日だけ生き返ることで、主人公が徐々に悟飯から悟空へと戻り始めます。
天下一武道会の予選のパンチマシンでは、世界で1番強いはずのサタンの記録を味方戦士達が余裕で超え続け、超人の戦いを見て驚く民衆、挑発的な一般人を簡単に倒す味方戦士、というあの天下一武道会が帰ってた様子に郷愁を感じます。
悟天とトランクスの強さに悟飯やベジータが驚く姿は、幼い悟飯に周囲が驚いた姿を思い出させ、ベジータは「超サイヤ人のバーゲンセールだな」と名言を残します。
何気ない地球での日常が舞台となるかと思いきや、今までのエピソード以上に戦いの規模は大きくなります。まずは南の界王が登場し、宇宙はエリアが分かれており悟空が住む地球は北エリアで、悟空が界王と呼んでいた元気玉を指導した界王は北の界王だと判明します。
その後、437話では界王神が登場します。界王神は界王の上である大界王の上であり、ついに悟空達の戦いがこの世の全宇宙、あの世、界王神界まで広がります。暗黒魔界の王であるダーブラも登場しますが、強くなりすぎた悟空、ベジータの相手ではなさそうでした。
魔人ブウとの戦いはこの世もあの世も界王神も見守る戦いとなり、悟空、悟飯、ベジータ、トランクス、悟天は全宇宙の命運を握るまでに強くなりました。
魔人ブウ編での特徴はフュージョンという新設定です。合体により戦いと強さの幅が広がり、ゴテンクスやベジットといった味方だけでなく、魔人ブウも界王神を取り込み合体することで強くなっていました。
ゴテンクスのフュージョンが切れてピンチになった瞬間、潜在能力を解放した悟飯がブウを圧倒する姿は、魔人ブウ編序盤のおとぼけ悟飯を忘れさせるような、全読者が望んだ悟飯の姿だったでしょう。
その悟飯を魔人ブウはゴテンクス吸収することで圧倒しますが、悟空とベジータが合体しベジットになりねじ伏せたことで、合体した姿ではありましたが悟空とベジータが最強の座に返り咲きました。
ドラゴンボールを集める機会こそないものの、人造人間編で制約の目立ったドラゴンボールが活躍し、「サンキュー!!ドラゴンボール!!!」と悟空のセリフと共にブウを倒した場面は、ドラゴンボールの特別さ、ありがたさを思い出す終わり方でした。
悟空がトランクス、悟天から「おじさん」と呼ばれるのは、初期から悟空の成長を見守ってきた読者にとっては新鮮であり、時の流れを感じ悲しさも抱くかもしれません。
魔人ブウ編では戦士達が続々と引退しており、戦える味方はサイヤ人だけになっていました。
さらに魔神ブウ討伐から10年後、最終回では天下一武道会でブウの生まれ変わりと悟空が会い、修行をつけます。
キャラクター達が年齢を重ねた様子を見て時の流れを感じ、もう冒険や戦いは終わったのだと納得して最終回を迎えるのが魔人ブウ編なのだと思います。
語り尽くせない魅力
最近の漫画は緻密に練り上げられた物語の設計や、綿密な伏線が当たり前となり、難解な漫画も多くあります。
一方でドラゴンボールは矛盾が多い漫画ではあり、突っ込み所は多々あります。
サイヤ人編からの悟空は家庭を放ったらかし、息子の気持ちも考えずにセルを応援し、魔神ブウがブルマの父や母を殺そうとしていても「だいじょうぶだ ドラゴンボールで生きかえられる」と冷酷な落ち着きを見せ、その上セクハラに加担し続ける人間であり、そんな人物が果たして主人公を務めるべきなのかという問題もあります。
しかし、未知溢れる冒険への好奇心、限界を泥臭く越え続ける向上心、次世代へ教えを残す大切さを教えてくれるのは、主人公を悟空が担うドラゴンボールという物語であり、原作終了後も新作が創られ続けるドラゴンボールは、これからも日本を代表する作品であり続けるでしょう。
あえて面白い理由を一個だけ挙げるとしたら…と、書いたのが以下の記事です。
ぜひ読んでみてください。
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