メタルギアソリッドオプスの紹介、感想と考察

作品の感想
スポンサーリンク

『メタルギアソリッド ポータブル・オプス』(METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS)は、PSP用ソフトとして2006年に発売されました。

メタルギアシリーズのナンバリング第6作目であり、前作メタルギア3から6年後の世界が舞台です。今作の主人公も前作から引き続きビッグボスです。

メタルギア3で登場したキャラクターが今作も引き続き参加し、パラメディックやシギントと(無線上ではあるが)会話ができるのは、このメタルギアオプスが最後です。

ビッグボスがFOXを離れてから、どのように仲間を集めて独自の部隊を結成するに至ったか、なぜアウターヘブンを作ることになったのか、ビッグボスの行動の謎を埋めるための、痒い所に手が届くストーリーになっています。

しかし、本作は非常に扱いが難しい作品であり、小島監督は脚本、監督、ゲームデザインは行わず、プロデュースのみの参加です。そのため、小島監督は「ストーリーライン的にメタルギアサーガに含まれるが、細かいところはメタルギアサーガからかなり逸れている」と述べています。

有り得たかもしれない、もう1つのメタルギア、のようにスピンオフ作品として考えるのが良いかとは思います。しかし、この作品の試みや説明しようとした内容は興味深く、決しておざなりにはできない作品です。

操作、遊び面の評価

今作はメタルギアシリーズで初めて、仲間集めができます。

後のメタルギアPW、メタルギア5では当たり前になったシステムですが、単独潜入が原則であるスネークが仲間を集めるというのは画期的でした。

兵士を集め仲間にし、部隊を編成する統率力はソリッド・スネークでは見られなかった戦い方でもあり、このシステムを導入しただけでも今作は価値が高いと思います。

敵の組織に潜入する長いミッションではなく、細切れのミッションが何個もあり、ミッションごとに装備品を選んだり、プレーヤーを変更できたりと、後のシリーズへ受け継がれる遊び方の変化が現れています。

このメタルギアオプス以前のメタルギアは、据え置きゲーム機で単独潜入の長期ミッションに挑む遊び方であったため、コアゲーマー向きではありました。しかし、携帯ゲーム機で短い複数のミッションになったことで、気軽にメタルギアと遊べるようになったと思います。

なおハードの性能もあってか、ポリゴンデモではなく絵でストーリーが進みます。

MPOのストーリー解説

復習のために、本作のプロットを整理します。

  • メタルギアソリッド3での任務、スネークイーター作戦から6年後、コロンビア中部沿岸・サンヒエロニモ半島が舞台。
  • FOX隊員であるカニンガムが、FOXを除隊したビッグボスを拉致し独房に閉じ込めている。
  • FOX隊員がアメリカの作ったメタルギアを奪い、ソ連兵と共に反乱を起こしていた。
  • スネークは同じく拘置所に捕まっていたロイ・キャンベルと脱走し、仲間を集めながら部隊を組織する。
  • スネーク達が敵組織を追い詰めると、カニンガムが登場。今回の事件は米国内での国防省とCIAの対立がその根にあり、国防省がCIAの弱体化を狙って仕組まれたものであると明かす。
  • 黒幕であるジーンは最初から全て知っており、自分の本当の計画である、ヴァージニアのCIA本部と国防省に核を打つ為に全員を利用していた。「賢者達」の支配から世界を解き放ち新たなパワーバランスを創出するのが狙い。
  • ジーンは「兵士達の天国」(アーミーズヘブン)を建設するための装備・人材・資金のデータをスネークに渡す
  • ビッグボス達はメタルギアを破壊し核発射を防ぐ。
  • オセロットがCIA長官を射殺し、賢者達を何度でも再結成できる賢者のリストや遺産の資料を手に入れる。

スネークイーター作戦においてヴォルギンが核を撃ったことや、ザ・ボスが死ぬことも全て仕組まれていたことなど、本作ではさらっと衝撃的な事実が明らかになります。

衝撃はオセロットがCIA長官に手をかけたことに留まらず、どうやらオセロットをも動かしていた今回の全ての事件の黒幕はゼロ少佐であることが示唆されます。また、ゼロ少佐は絶対兵士の戦闘データ、遺伝子、ゲノムと気になる言葉をオセロットに教え、オセロットと恐るべき子供達計画、シャドーモセス事件のつながりが予感されます。オセロットが「我々が愛国者達となるために」と言って物語が終わりであり、怒涛の勢いで重要な情報が明かされていきます。

ただし、このオセロットやゼロの言動は刺激的である一方で、メタルギアシリーズ全体の流れを考えると矛盾を抱えてもいます。

個人的な感想としては、もしメタルギアオプスを正史とするとゼロ少佐が悪者すぎると思います。ゼロ少佐は自らの利益のためにザ・ボスの死さえも計画したと解釈可能でありますが、後のメタルギア5で登場する真実の記録というカセットテープ等からは、ゼロ少佐はザ・ボスやビッグボスのことを敬い、大切にする様子が伺えました。

また、今作ではソコロフが生きており重要な情報提要をスネーク達に行いますが、メタルギア3の流れを知っていると、ソコロフが実は生きていた、は多少無理がある設定ではないかとも思いました。

矛盾を超える面白さ

このように、細かく見るとメタルギアシリーズと整合性のとれない部分は多くあります。しかし、ただでさえビッグボスの行動には空白が多く謎だらけであるため、今作はメタルギアシリーズ全体のピースを埋めるために非常に魅力的だと思います。

ビッグボスの統率力、仲間を作る力はソリッド・スネークには見られないビッグボス固有の能力であり、FOXの解散とFOXHOUND設立の経緯が上手く説明されています。

若きキャンベルとの出会いや、フランク・イェーガーとの再会・保護、パラメディックやシギントといったスネークイーター作戦での仲間との絆が描かれ、ビッグボスの人柄や慕われる力はザ・ボスを彷彿とさせます。

さらに、アウターヘブンの思想の原型が見られ、影の暗躍者オセロットの口からは愛国者達と言及されるといった、ビッグボスの謎に対して的確に説明が与えられます。

そのため今作は、有り得たかもしれない1つの物語として、焦点を合わせすぎずにぼんやりと見つめるのが良いのではないでしょうか。プレーヤーとスネーク達が紡ぎ出すメタルギアシリーズの解釈の上で、メタルギアオプスは新しい考察を許してくれます。

他の方の記事で、メタルギアオプスの黒幕はロイ・キャンベルなのでは、という考察記事があります。当時、小学生だった自分が読んで未だに覚えている程、面白い考察です。

メタルギアオプスと正史が合流するような考察が可能になれば、また新しいメタルギアシリーズの解釈ができるかもしれません。

最後に、ビッグボスがカニンガム戦で「俺はボスとは違う生き方をする」と言い放ちました。

スネークがまたしても人の作った任務をこなしていた事を知った上で、任務の中で動くことや、人のシナリオの上で動くことを否定し、ザ・ボスの軍人的な生き方からは脱却し始めるのは、後のメタルギアシリーズにとって物語の大きな分かれ目となっているのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました